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ピュアで、強き想いから未来をつくる。

Fridays For Future Tokyo オーガナイザー 黒部 睦 Design more. 共同設立者・代表 入江 遥斗 Re:touch 田中 信康 エグゼクティブプロデューサー Special対談

PROFILE

入江 遥斗さん(写真左端)

Design more. 共同設立者・代表
横浜国立大学 都市科学部 都市社会共生学科
高校時代に、SDGsを実践するための学生団体「50cm.」を設立。2020年からは新たなプロジェクト「Design,more.」を立ち上げ、デザインの視点から多分野横断的な活動を展開。

黒部 睦さん(写真左から2番目)

Fridays For Future Tokyo オーガナイザー
国立音楽大学 演奏・創作学科
若者主体の気候正義を求めるムーヴメント「Fridays For Future」のオーガナイザーや、気候変動と音楽をからめたライブイベント「Climate Live Japan」の実行委員として、気候正義を広める活動を展開。

英国で開催されたCOP26の会期中、各国の首脳以外に、もう一人注目を集めていた人物、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん。彼女の言動は今や世界中に影響力を持つ。日本にも彼女に負けず劣らずの熱いハートを持ったおふたり入江遥斗さんと黒部 睦さんに、真っ直ぐでピュアで、力のある言葉は、地球の未来へ希望を抱かせてくれるものであった。

Movie

心のモヤモヤを取り除いてくれたのがSDGsでした。

田中:2人とも高校1年のときにSDGsと出会ったのですね。契機となったエピソードから教えてください

黒部:私がSDGsを知ったきっかけは、1学年上の高校の先輩にワークショップに誘われて行ったら、それがSDGsのワークショップで。それまでも、小さいときからみんなが幸せに暮らせたらいいのになっていうのを思っていて、SDGsを学んだときに、あ、これが達成されたら、本当にみんなが幸せに暮らせる社会ができるかもしれないと思って、これを広める活動をぜひやりたいと思ったのがきっかけです。

入江:私は、高校1年生の冬に、生物の授業でSDGsと生態系の関連性について勉強したのがきっかけです。小中学生のころから自然に対してすごく興味があったのですが、環境問題は環境専門家の人が解決するしかないんだというモヤモヤした気持ちがありました。それがSDGsの達成によって、それぞれの社会課題が関連しているということと、あと、自分たちが主体になれる、解決の主体になれるんだっていうこの2つが自分にとってすごく心に刺さりました。

田中:すごいね。2人とも、こういうことに関心を持って、世の中を動かしたいという気持ちでいるわけじゃないですか、実際に、黒部さんはスイスとスウェーデンに行ってきたのですよね。このときのショックが大きかったと聞きましたが

黒部:はい、すごかったです。もう吸収することばかりだし、ショックを受けることばかりでした。

田中:スウェーデンではデモ活動なども目の当たりにしたのですよね。

黒部:はい。気候変動対策を求めて座り込みをしてるのは、テレビでは見たことはあったけど、すごく遠い国の問題で、すごいなぐらいに思ってたのが、あ、本当にいるんだって。同世代の子が、学校を休んでまで訴えているのに、私が、何もしなくていいわけないよな、とそこで気づきました。

田中:2人ともいい意味でのアクティビストだ。多くの人たちの行動変容を揺り動かすようなアクションになっている。これかなり、勇気が要ることじゃないですか?

入江:やっぱり行動を起こすためのモチベーションというか内発的な動機づけは、人によって多様だなと感じます。例えば、グレタさんは大人に対する怒りをモチベーションとして、すごく大きな活動を起こされてきた。逆に自分は、大人の方々が発しているメッセージを若者が受け取って、それをしっかり次の時代に継承していくという、「世代間の継承」をよりスムーズに行うことが一番の原動力になっているんですね。SDGsが登場したことによって、言い出すことに対する勇気が出やすくなった。問題をSDGsにタグづけすることによって、自分の考えていることがもっと明確に話せるようになったんじゃないかなと思いますね。

田中:僕は、SDGsがなかったら、こういう出逢いはなかった。「これからの時代に必要な組織は、未来創造型組織だ。」とよく伝えていますが、価値観の違いをちゃんと組織のなかで認め合える、ということです。これって、我々日本人ってこれが意外とできないんですよ。僕自身こそ自問自答しながらの毎日ですけどね。本当にわかり合うっていうことはすごく大切なことなので、SDGsのもつパワーをより社会に活かしていかねばならないよね


自分が思ったことを言葉として伝えたり、
アクションするのは、本当にエネルギッシュなことです。

田中:黒部さんは「Fridays For Future」のメンバーですね。活動を始めたきっかけは何ですか?

黒部:スウェーデンで影響を受けて私も活動を始めたのですが、日本の文化に、怒りとか座り込みをして学校でストライキっていうのはちょっと合わないなと思いました。私も皆勤賞を途絶えさせるわけにいかないし(笑)。そこで学校のロッカーに、グレタさんが持ってるようなプラカードを貼るっていうのを勝手に始めたんですよ。友達とかも誘って、やってみない?みたいな感じでやったらそれが結構広がって。あ、こういうふうに広がっていくんだとか思っていたら、それをたまたまFridays For Futureのメンバー、オーガナイザーの子が見つけてくれて、一緒にやらない?って声をかけてくれたのがきっかけです。

田中: Fridays For Futureの活動をされていて、当初の活動との変化は?

黒部:ずっと「気候正義」を訴えてきました。その結果、少しずつ政府とか企業とかも変わってきているなっていうのもありますし、私たちの活動を知ってもらえて、国会に呼んでもらったりとかそういう機会も増えたんですけど、長期的に社会全体を変えていくにはまだ足りてないかなって思っていて。何か取り組んでくださいって訴えるところから、もっと取り組みの内容をより長い目で見て、より未来のことを考えたものにしてほしいっていう、その内容の細かい目標立てなどに注目して発信する機会が最近増えたかなと思います。

入江:私は黒部さんの高校時代から今までのSNS発信などを間近で見てきたというか。やっぱり熱量がすごいなっていうのをすごく感じています。毎日継続的に発信し続けるっていうところは、やってみるとすごく難しいところで、私はなかなかうまくいかない。気候正義であったり、自分のなかで思ったことをしっかり言葉に変換して伝えたり、アクションとして出力することは、本当にすごいエネルギッシュだったし、自分も強く影響を受けましたね

田中:2人の行動は、まさにコレクティブ・ラーニングだ。今まで1人でできなかったものを本当にいろんな意見を参考にしながら共同でやっていくことで、コレクティブインパクトに変わっていく。すごく意義のあることだと思う。入江くんも言っているように、やらされ感じゃない。本当に自分の意思でやってるわけじゃないですか、だれかから何かをいわれたわけじゃない。こういう人たちがやっぱりこの時代を担っていく世代で、すごく僕はいい時代だと思います。
黒部さんに、もう1つ聞きましょう。「Climate Live Japan」についてお願いします。

黒部:Climate Live自体は、気候変動っていう問題を音楽を通してもっとたくさんの人に知ってもらいたいっていう想いで、イギリスの当時高校生だった子が最初に立ち上げたものです。気候変動っていう問題はやっぱり身近に感じづらい。それを音楽っていう影響力のあるものを使って伝えたいっていうのと、アーティストの方とかトークゲストの方にも、これをきっかけに発信してもらう。日本は、そういうことを影響力のある人が発信しづらい現実があります。だから、こういうライブをきっかけに、いろいろ発信しやすいようになっていたらいいなと思いながらライブを運営しています。

田中:SDGsって、まだ教育の現場でやっていくには敷居が高いとか、難しいことを勉強させられるという意識になる。その敷居を下げるには、心を揺るがすものが必要でその一つが音楽といえるのでしょうね。僕も実は岐阜在住、岐阜出身のアーティストを集めた企画を進めているのです。

黒部:すごいです!ぜひおしえてください。

田中:Climate Live Japanのような大きな活動ではないですが、地域にフィットしたローカルな活動をしていくことは、日本地域連携する上でしっかり土台を支えていくムーブメントになってるんじゃないかな。


SDGsによって、
どんどんコミュニケーションは多様化していく。

田中:入江くんはSDGsと「教育・福祉・デザイン」とを結びつけることに取り組んでいるのですよね。是非これについて教えてください。

入江:ではまず「SDGsと教育」について。SDGsが出てきた頃から、学校教育のなかにいかにフィットしていくのかっていうところに疑問を強く感じていました。やっぱり学校もSDGsを取り入れたい、だけど、取り入れ方がわからない。そこで中高生と大人のちょうど境界線にいる私たちが、学校教育と社会課題とのポジティブな関係性をつくっていくために、最近「Design,more.」という団体を立ち上げました。社会課題と学校教育を結ぶためには、その結ぶときのコミュニケーションがすごく大事だなと思って。自分が高校生のときに立ち上げた「50cm.」っていう団体でも大切にしていたんですが、やっぱりデザインの力である程度、見せ方をよくしていくと、今まで興味がなかった人にそこに食いついてくれる可能性が出てくる。学校教育のなかにどうしても今まで欠けてしまっていた社会課題、やらされてしまう社会課題ではない、また別の社会課題との関連性をつくれたらと。その関係性を構築することを大切にしています。

「SDGsと福祉」も同じような感じで、学生時代に私たちが障がいのある方と関わることってほとんどない。そうすると、いざ障がいのある方が困ってる姿を見かけたときに、やっぱり声かけできないんですよね。どうしても心のバリアが生まれてしまう。その心のバリアをいかにして取り除くかっていうところにすごく注目しています。社会課題も福祉もそうなんですけど、マイナスなものをゼロに持っていくっていう動きが社会課題でもあるし、今までの社会課題の解決方法でもあったし、福祉に関してもあると思うんです。

田中:いやぁ、素晴らしい!デザインはどうですか。

入江:SDGsも、ただ人に伝える、情報のコミュニケーションだけではなく、行動に移せるっていうところでも、コミュニケーションの幅がただ単一路線というか直線じゃなくて、それこそ循環しているんじゃないかなというふうに思うんですね。なので、SDGsという単語というか言葉を使いながら、自分の意見を発信することもできるようになるし、今まで自分の言葉にしづらかったものが、SDGsっていうタグを使ったりだとか、いろんな表現方法できるようになったことで、自分が抱えている問題、自分が気になってる問題を可視化することもできるし、それを発信することも容易になってきたと。そういうところにコミュニケーションの在り方が、たぶんSDGsの台頭によって変わってきたんじゃないかなと感じています。
これからどんどんコミュニケーションってまた多様化していくと思うんですね。そのなかで、SDGsウォッシュに代表されるように、やっぱり間違ったものというか健全ではないものが出てきてしまうかもしれない。ただ、それも引っくるめてのコミュニケーションなんじゃないかなというふうに思っています。社会課題を自分の言葉で表現して、それを自分の得意な分野というか、自分が解決できるような身近な分野から出力していくっていう、そういう多様なところがこのSDGsコミュニケーションの特長なんじゃないかなというふうに思います。


きれいごとをいっても許容できるような社会を
生み出していきたい

田中:逆にネガティブな思考や話題に挙げられることってないかな?心が折れそうになったりするとか。

入江:やっぱり行動に出ると、きれいごとだよっていうのはすごくいわれる。何もわかってないだろとか。ただ、何もわかってないのが強みともいえる。例えば、どこかの会社の利益であったり大人の事情に影響されないっていうのも学生の強みなのかなと。なので、こうやっていろいろいわせていただいているわけです。ただ、自分が尊敬するSDGsを広めている人の1人の方がいわれていたのは、やっぱりそのままの言葉で伝えること、きれいごとで勝負できるのがSDGsのいいところだっていう話をされてて、まさにそうだなっていうふうに感じました。とりあえず、SDGsというものに対して自分が何かアクションを起こそうと思えることは、まずきれいごとでもいいからそれをやってみる。自分の1つ下の世代、自分の次の世代にもきれいごとがいえるような、きれいごとをいっても許容できるような、そんな社会を生み出していけたらなっていうことを、自戒の念も込めてですけど、感じていますね。

田中:本当に謙虚だね。とても大切なことだと思う。

黒部:やらされてるんじゃなくて、心から社会を変えたいという想いがあればちゃんと行動に反映されていく。意識高いからとかじゃなくて、無意識のうちに行動が変わったり声を上げたりっていうのをするようになると思うし、それこそすごく持続可能な活動っていうのが出来上がっていくんじゃないかな。

田中:だから2人の意見っていうのは強いんですよね。それを受け取った僕たちは、さあ、何をするのが一番いいんだろうなっていうことを考えさせられる。だけどここも実は解答はすごくシンプルで、やっぱり社会にいいことをしていくことを説いて、それを自分の行動でもしっかり示し、間違ったときはごめんなさいってすぐ起動修正すればいい話で。正解がない話なので、どんどん自信を持ってやればいいんです。今後の課題はどう?うまくいくことばっかりじゃないよね?

入江:そうですね、やっぱり自分のなかでは、SDGsコミュニケーションって言葉にするのも難しい。良い・悪いの2軸で捉えられる問題でもないので、その部分の取り扱いに関しては勉強不足というか、まだまだ足りないことがたくさんあるなと考えています。きれいごとだけで終わらせたくもないし、かといってSDGsそのものをもうあきらめたくもないし。そこの部分で思い悩んでいるというか、どうやって表現したら多くの人に受け取ってもらえるのか、多くの人の誤解を生むことなく表現できるのかということをすごく考えます。コミュニケーションはすごく大事だと思うし、そこをいかに、いろんな方法を模索しながらですけど、健全化していくかっていうのは自分の今の1つの問いというかメインの問題ですね。

黒部:いろんな問題を解決したいなと思って考えると、やっぱり社会を変えなくちゃいけないっていうところにたどり着くんですね。本当に自分が大切にしたいものとかつながりとかを大事にしたら、地球もよくなるし、自然とかも人との関わりとかもすごくよい方向に行って、SDGsとかもどんどん達成できるっていうことをどうやったら伝えられるかっていうのも、今すごく悩んでいるところです。そのためにも経済とかも知らなくちゃいけないし、哲学だったり医学だったり、本当にいろんな分野のことをもっともっと自分自身も勉強して、自分がいかにいろんな人の搾取のうえに成り立っているかとかも全然まだ理解できていなくて、もっともっと自分も勉強しなくちゃいけないし、それを踏まえてもっとみんなに、社会を変えるってどういうことかっていうのを伝えられるようにしなくちゃいけないなと思っています。


やりたいこと、楽しいな、幸せだなって思えることを、
みんなができるような社会をつくりたい

田中: SDGs達成の2030年のときには、2人とも30歳。その頃の社会はどうなっているだろうね?

入江:やっぱりどんどんサステナビリティみたいなものが、流行に終わらずに文化として定着していけばいいですね。そのためのコミュニケーションを追い求めていきたいなと思う。そのための目標の10年間でもあるんですが、そういうSDGs的な思想、SDGsという言葉じゃなくて、2030年が終わったらSDGsは達成年として終わって、また新しい目標が何か出てくるかもしれない。ただ、そのなかで、SDGsが始まる前からずっといわれてきた、地球を持続可能にしていかないといけないねっていう、その軸を絶やしてはいけないなっていうことを考えています
あとはwell-beingみたいな、体の健康とはまた違った心の健康、そして社会的な健康みたいなところについても考えられる、そんな30歳になれたらいいなと思っています

黒部:私がモヤモヤしていたのを全部、言葉にしてくれました(笑)。でも本当にみんなが競い合ってだれかが幸せになってとかではなくて、もっと自分が何にも縛られずに、やりたいこととか、楽しいな、幸せだなって思えることをみんなができるような。それも発展途上国だからとか先進国だからとか、そういう状況とかの差がどんどんなくなって、本当にみんながそういうように生きられる社会。たぶん10年では足りないと思うんですけど。
 温室効果ガスとかの排出もまだ2030年は途中の目標で、全然、解決とかはされてないとは思うんですけど、よりいい方向に持っていこうっていう流れがずっと続いていて、それが流行に終わらずに、もうその先も、その先もっていうようにどんどんいいものになっていってたらいいなと思いますし、それを加速させられるような人でずっとありたいなと思います

田中:楽しみにしてますよ!社会を変える重要なキーマンになっていただかなきゃ困るなっていうぐらいのパッションをもってらっしゃる。今、自分たちが見ている、これが本当にザリアルなので、そこに課題感も謙虚さももっているんで、すごく楽しみですね。
こうやって自分の思いを持った人たちが、社会にどんどん出てきてFridays For Futureなどの活動などに代表されるけど、強い想いをもった人が沢山いるわけでしょう。こうした人たちが社会に出てきてちゃんと正義を問うていくと、確実によりよい社会になってもらわないと困るし、それは大人たちも襟を正さなきゃいけなくなるだろうし、2人もすでに立派な大人として、本当によりよい形の世代循環が行われるといいですよね
ということで、これは5年後にもう1回インタビューだな!(笑)

入江:はい。
黒部:お願いします。

Re:touch Point!

ピュアで謙虚な二人の言葉から、 これから創る素敵な未来が見えた。

Re:touch
エグゼクティブプロデューサー
田中 信康
Z世代おそるべし!インタビュー中、何度「すごい」「すばらしい」という声を発しただろう。彼らの行動や思考は、眩しいくらいにキラキラ輝いていた。環境フィールドアクティビストとして軽々しく評価する大人、ネガティブ思考を吹き飛ばすほどの強さを感じた。二人の信念と驚くべきほどのその謙虚な姿勢。そしてかなりアクティブな活動をしていても、「まだまだ足りない」という二人の将来が本当に楽しみでならない。彼らが創る素敵な未来。確実によりよい社会になっていることを確信している。
5年後の再会を約束した。必ずまた会おう。