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木曽三川のなかで揖斐川だけに
オオサンショウウオがいない。
田中(信):今日は、大垣北高校の自然科学部オオサンショウウオ班のみなさんにお話を聞きます。よろしくお願いします。
複数:よろしくお願いします。
田中(信):オオサンショウウオ班のみなさんが発表した研究が、「ぎふ未来社会共創プロジェクト探求アワード」で最優秀賞、「日本学生科学賞」で内閣総理大臣賞と、どちらも最高賞を受賞されていて本当にすごいですね。
河合:ありがとうございます。
田中(信):このオオサンショウウオ班ができたのはいつごろなんですか?
河合:2021年です。
田中(信):みなさんは高校2年生と1年生なんで(取材当時)、入学した時にはもうあったんですね。
河合:はい、そうです。
田中(信):どうしてオオサンショウウオ班ができたんですか?
河合:木曽川、長良川、揖斐川の木曽三川で、大垣北高校に一番近い揖斐川にだけ、オオサンショウウオが生息していないんです。
田中(信):どうして揖斐川にだけいないんだろう。
河合:岐阜県はオオサンショウウオの生息地の東端なんですが、揖斐川の東にある長良川や木曽川に生息していて、どうして揖斐川にいないのかを解明したいとオオサンショウウオ班ができました。
田中(信):それは解明できたんですか?
河合:揖斐川と長良川の地史を調べてみると、岐阜県付近にオオサンショウウオが分布を広げた年代には、揖斐川はまだ不安定な河川だったんですが、長良川はすでに現在のような安定した河川でした。
田中(信):なるほど。岐阜県にオオサンショウウオが移ってきた時に、揖斐川はまだ今のような安定な河川とはいえなかったので、オオサンショウウオがすめなかったというわけですね。
河合:ほかにも、河川が合流する地点の標高が高く河川長が長いと、オオサンショウウオの生息率が高くなることがわかりました。
田中(信):すばらしい研究ですね。
河合:ただ、岐阜県にはオオサンショウウオの研究機関がなくて、その分布状況などがよくわかりませんでした。だったら、自分たちでオオサンショウウオの生息状況を調べてみようということになりました。
田中(信):それで、岐阜県のオオサンショウウオの生息状況を調査しているんですね。

オオサンショウウオ観察会で、
岐阜県で初めて交雑種を発見。
河合:私たち2年生が入学した2023年の8月に下呂市金山町にある飛騨川支流の菅田川で、「歩こう菅田川!見つけようオオサンショウウオ」という観察会を、地域の小学生や保護者、住民のみなさんにも参加してもらって実施しました。
田中(信):地域のみなさんと一緒に調査したんですね。
河合:この時に、オオサンショウウオと外来種のチュウゴクオオサンショウウオの交雑種を発見しました。岐阜県で交雑種の生息を確認したのは初めてで、この発見から交雑種の研究をすることになりました。
田中(信):いきなり岐阜県初の発見とはすばらしいんですが、交雑種かどうかは見ればわかるんですか?
河合:それは、自然科学部顧問の高木先生の経験で。ちょっと見た目が違うので。
田中(信):色とか模様が違うんだ。
河合:私たちは全然わかんなかったんですけど、高木先生がなんか怪しいぞって、すごく険しい顔をして。
田中(信):それで、どうしたんですか?
河合:この時に捕獲した3匹の検体を、広島大学オオサンショウウオ保全対策プロジェクト研究センターでDNA解析してもらったところ、このうちの1匹が交雑種だと判明しました。
田中(信):オオサンショウウオの交雑種がいると、どんな弊害があるんですか?
河合:交雑種はアユやカエルなどをたくさん捕食して、地域の生態系に影響を及ぼす危険があります。
田中(信):だから、こうしたオオサンショウウオの観察会などで生息状況を調査して、オオサンショウウオの固有種を守る研究をしているんだ。
河合:はい。捕獲したオオサンショウウオのなかで固有種と思われる個体については、現地で体各部の測定やDNA解析に必要な微量組織片の採取を行い放流しています(文化庁に申請済み)。また、交雑種の可能性が高い個体については、河川環境楽園にあるアクア・トトぎふで一時預かってもらったりして、固有種であるとわかれば元の場所に放流しています。
田中(信):オオサンショウウオの観察会に参加している地域のみなさんは、オオサンショウウオ班のみなさんのこうした保全活動をどう思っていらっしゃいますか?
河合:当初は、オオサンショウウオはアユを捕食してしまう厄介者と思われている方が多かったんですが、私たちがオオサンショウウオがいるというのはアユなどの水産資源が豊富な清流なんだって訴えてきたので、ようやくそのことが理解してもらえるようになりました。
田中(信):オオサンショウウオ班のみなさんの精度の高い調査が評価されて、国内外の研究機関から共同研究の依頼があるそうですね。
河合:広島大学、麻布大学、京都大学、アメリカのバックネル大学、熊本大学、産業技術総合研究所などからあります。
田中(信):これはもう高校生のレベルを超えているね。
河合:ありがとうございます。

オオサンショウウオって、
よく見ると本当にかわいい。
田中(信):ところで、みなさんはどうしてオオサンショウウオ班に入ったんですか?
粟井:とても楽しそうだったので。
藤井:先輩たちが活発に活動していらっしゃったし。
田中(隆):中学3年生の高校説明会で大垣北高校に来たんですけど、その時に、自然科学部の先輩たちが活動紹介をしていて、実際にサンショウウオに触らせてくれたりして、ちょっと興味を持ったっていう感じですね。
田中(信):大垣北高校といえば岐阜県でも有数の進学校で、受験勉強とかに時間を割かれるなかで、オオサンショウウオを研究されていると聞いて、本当にびっくりしたんですよ。しかも、岐阜県には研究機関がないということは、みなさんが岐阜県のオオサンショウウオ研究の先頭を走っているわけで、やらなければならないことがいっぱいあって大変ですね。岐阜県のオオサンショウウオに関する資料やデータがまったくないわけだから。
複数:はい。めちゃめちゃ。やばいよね。大変。
田中(信):ただ、環境省や岐阜県のレッドリストに登録されているヤマトサンショウウオが、岐阜県にまだ生息していることはとても貴重なことだもんね。
粟井:大事なところですしね。
河合:大事なところなのに、交雑種が。
田中(信):オオサンショウウオの交雑種が見つかって、オオサンショウウオ班の保全活動はどうなりましたか?
河合:まずは、どれくらい交雑種がいるのかを知ることが大切だと思ったので、それから毎月、菅田川に調査に行っています。
田中(信):毎月、下呂市金山町へ、すごい。
河合:そうです。
田中(信):とにかく、岐阜県でオオサンショウウオの固有種を絶滅の危機から救っていきたいですね。
河合:でも、まだ1つの河川なので、岐阜県でやっているの。もっと調べていかんと。
田中(信):オオサンショウウオ班で唯一の1年生である安藤さんは、この1年間を振り返ってみてどんなことを感じていますか?
安藤(芽):まず、オオサンショウウオ班に入った時は、オオサンショウウオが揖斐川にはいないっていうこととか、交雑種が問題になっているということを知りませんでした。
田中(信):そうですよね。
安藤(芽):最初のころは、先輩たちからシミュレーションでわかったこととかを聞いて、へえーって感じだったんですけど、でも、だんだんわかっていくうちに、すごく大変な状況になっているっていうことがわかりました。しかも、それをやっているのがオオサンショウウオ班だけで、岐阜県にはほかにやっているところがないので、これからも先輩たちがやってきたことを続けていきたいと思います。
田中(信):すごい、すごい。ちゃんと後継者が育っている。
複数:(笑)
田中(信):オオサンショウウオ班には女子が多くて、ちょっと両生類が苦手なんですってことはないの?
複数:かわいいです。
田中(信):えー、かわいいんや。
安藤(有):よく見ると本当にかわいい。
田中(信):昔、長良川の源流で知り合いの林業を手伝ったことがありますが、そのころはよくオオサンショウウオを見かけたもんね。
河合:そうなんですね。
田中(信):近年では、企業もただ利益を上げているだけでは評価されなくて。みなさんがやっているような生物多様性の保全のほかにも、気候変動への対策やカーボンニュートラルなど、企業が社会的責任を果たすことを求められています。こうしたことをしっかりとやっていない企業には、投資家も投資しないようになっているんですよ。
河合:へえー。
田中(信):うちの会社でも、2000年代から環境負荷を低減する環境印刷に取り組んだりしているんですが、岐阜県にもこうした取り組みをしているところがいっぱいあるので、そうした企業や地方自治体などと連携するといいですね。
河合:ぜひ、そうしたいですね。

サンクチュアリをつくって、
菅田川の固有種を守りたい。
田中(信):みなさんの大半が2年生で、もうすぐ3年生になるんですが、残り1年間でどんなことをしたいか、順番に話してください。
田中(隆):菅田川の現状すらまだわかっていないし、岐阜県の現状も全然わかっていない状態なので、残された1年はできる限りこの保全活動に取り組んでいく、そのための調査をどんどんやっていくのがまず1つ。そうした保全活動を通じて地域の方々とかそれ以外の大勢の人たちにこの状況を知ってもらうことも、残り1年でやっていかなきゃなって思っています。大垣北でもこうしたことをもっとアピールして、保全活動に加わってくれる人をできる限り増やしていきたいなって思います。
田中(信):在校生や新入生にどんどん参加してほしいですね。
藤井:今、菅田川では交雑が広がってしまっていて、こうした交雑をまず食い止めたい。そして、オオサンショウウオのサンクチュアリをつくって、菅田川の固有種を守っていければなと思っています。あとは、大学でオオサンショウウオの研究をしたいなって思っているので、オオサンショウウオ班で取り組んでいることを生かしていきたいですし、後輩たちにもがんばってもらいたいです。
田中(信):おー、オオサンショウウオの研究を続けたいと。すばらしい。
安藤(芽):私も、菅田川の現状がわかってきたので、それをよりよくしていくっていうのもそうですし、ほかの岐阜県の河川はまだあまりわかっていないので、それをもっとわかるようにしていきたいです。
田中(信):安藤さんは1年生だから、まだ2年あるので、いろんなことができますよ。
安藤(芽):あと、学校や地域の人にもっと知ってもらえるような活動もしていきたいと思います。
田中(信):すごい。
河合:私は、今年は全国大会もあったり、これからの未来につながる、また、がんばったら海外に行けるかもしれない大会とか、まだいっぱい大会があるので、そこに向けて全力を尽くしていけたらと思っています。あとは、藤井くんがさっき大学でオオサンショウウオの研究をしたいといったんですけど、私は大学ではやらないかもしれないけど、オオサンショウウオ班の後輩がやっている調査とかに一緒に参加できたら楽しいだろうとは思っています。
田中(信):みんなしっかりと自分の意見がいえるね。
安藤(有):私は大垣北高校に入るまでは、全然、オオサンショウウオについて知らなくて、ここで初めてオオサンショウウオに触れて、2年間にわたり保全活動してきてだいぶ愛着が湧いてきました。岐阜県のオオサンショウウオを守ることは、今はまだ計画の段階なので、それを実行に移せたらいいなって。また、もう1つは、高校生でこういう研究に加われているのは、すごく貴重な体験をさせてもらっていると思うので、あと1年でより多くのことを学んで、どんな進路にいくかわからないんですけど、それに少しでも生かしていきたいなと思っています。
田中(信):みんな、すごいな。
粟井:私も、3年生になっても本当にやりたいんですけど、受験もあるし、だんだんこっちに参加できることが少なくなってくるので、だから、残された時間、やりたいこともやれることもたくさんあるので、時間を大切にしてやっていきたいです。大垣北に入学するまで将来やりたいこととか全然決まっていなかったんですけど、今回、自然科学部に入ってそういう世界に片足を突っ込ませていただいたので、結構、自分の大学へのモチベーションがすごく上がっているというか、やりたいことが出てきたので、研究とかもやりながら、後輩も育てながら、自分も大学へ向けていろいろとやっていきたいです。
田中(信):あー、すばらしい。
志田:私はオオサンショウウオを実際に見たこともなくて、名前だけ聞いたことがあるっていう程度の知識だったんですけど、こうやってここまで2年間みんなと一緒に活動をするなかで、オオサンショウウオという生き物について知識とかがだいぶ増えたり、あと、すごく愛着も湧いてきたので、あと1年がんばっていきたいです。

一生懸命がんばっていれば、
みんなが助けてくれる。
田中(信):みなさん、ありがとうございました。こうしたオオサンショウウオの保全活動を通じて、地域のみなさん、また、大学や研究機関の人たちとふれあうことで、何か変わったこととかありますか?
河合:私たちがやっていることを大学とか地域の方々に手伝ってもらえるようになって、一生懸命がんばっていれば周りから助けてもらえることがわかりました。そういう周りのやさしさを知って、すごく心が温かくなったというか、うれしい気持ちになりました。
田中(信):みなさんの話を聞いていて、自分たちがやってきたことに誇りを持っているなって感じました。あとは、みんなで一生懸命やってきたっていうのがひしひしと伝わってきますし、オオサンショウウオ班の保全活動がいろいろなところから評価されて大きな自信になったと思います。こうしたことは、これからオオサンショウウオの研究を続けても続けなくても、きっとみなさんの人生のどこかで役立ってきますよ。
河合:そうですね。いろいろと締め切りとかに追われつつ、みんなでがんばりました。調査も冬はとても寒いんですよ。
粟井:大変です。
河合:明日、明後日も行くんですよ。郡上市和良町で「はざこシンポジウム」っていうのがあって、そこでオオサンショウウオ班の研究発表をすることになっています。
田中(信):いろんなところに呼ばれるんですね。
河合:そういうところでも、地域の方々と交流しつつ、調査をしていきたいです。
田中(信):本当にいろいろな人たちとふれあうことができて、オオサンショウウオ班にとっても個人にとっても財産になりますね。これから、日本だけでなく世界へ羽ばたいていってください。みなさんはぎふ未来社会共創プロジェクト探求アワードの最優秀賞もすごいですが、日本学生科学賞の内閣総理大臣賞を受賞したんですから。
河合:とてもうれしかったです。
田中(信):スーパーな自信につながるね。
複数:(笑)

オオサンショウウオのことを、
もっと知ってほしい。
田中(信):あと、これまでがんばってきて、こうしてもらえるとうれしい、みたいなことはありますか?
河合:高校生がやっていることなので仕方がないとは思うんですが、もう少し予算があればいろいろなことができるとは感じています。オオサンショウウオのことにもっと早く気づいて、みんなで保全活動ができていればよかったと思っています。
田中(信):オオサンショウウオ班の保全活動もそうですし、岐阜県のオオサンショウウオが大変なことになっていることを、もっとたくさんの人たちに知ってほしいですね。私たちも、そうしたお手伝いがしたいと、今回の取材になりました。水の都おおがきにある大垣北高校のみなさんが、オオサンショウウオの保全活動をしているんだから、これからもどんどんアピールさせてもらいますよ。
河合:私たちも、オオサンショウウオ班の保全活動をもっとたくさんの人たちに知ってもらいたいですし、企業や地方自治体、また、生息地のみなさんにもどんどん参加してもらいたいですね。
複数:そうですね。
粟井:それこそ、一緒に調査してほしい。
田中(信):なるほど。
粟井:今も、オオサンショウウオ班では下呂市金山町の菅田川を調査しています。私たちだけでなく岐阜県や大学の方たちに協力してもらっているんですけど、やっぱり人数が足りなかったりとかあるので、たくさんの人が来てくれればほかの河川でも調査ができて、交雑種が見つかれば早く対処できるのではと思います。
河合:私たちには限界があって、土日しか動けません。それも、先生に連れていってもらうことしかできないんです、高校生なので。
田中(信):大変やね。
河合:そう、大変なので、もっとたくさんの方々に協力してほしいです。
粟井:大学とかから来てくださったら、すごくうれしい。
河合:大規模にやっていきたいです。
田中(信):そうね。それぐらいの研究だと思いますよ。このRe:touchはスポンサーを探すのではなく、オオサンショウウオ班の取り組みに共感してくれる企業や地方自治体、地域のみなさんなどと、実際に保全活動しましょうというところにつなげていきたいです。私たちは、これを「共創」と呼んでいます。これからもオオサンショウウオ班のことをアピールしながら、オオサンショウウオの保全活動の輪を広げていきたいですね。
河合:いろんな人に知ってもらいたいです。

保全活動の輪が広がって、
高校生のパワーってすごい。
田中(信):みなさん、ありがとうございました。あと、高木先生から何かありますか?
高木:私はずっとサンショウウオの研究をしているんですけど、小型のサンショウウオがどちらかというと専門で、オオサンショウウオにはできるだけ触れないようにしていました。それで、昨年の卒業生たちが揖斐川にオオサンショウウオがいない理由を調べてくれて、これもかなりいい研究でうまくまとめてくれたんですけど、それがきっかけでやり始めて、本当に最初の観察会で交雑種が見つかりました。オオサンショウウオ班の保全活動では、結構、多くの人たちを動かしているんですね。
田中(信):そうなんですね。
高木:例えば、菅田川はおいしいアユが取れる河川なので、漁協さんが見学にいらっしゃったりとか。オオサンショウウオの交雑種は固有種よりもたくさんアユを捕食することを知ってもらうと、高校生たちが一生懸命やってくれているからとどんどん協力してもらえるようになったりしています。
田中(信):へえー。
高木:あとは、オオサンショウウオの測定も、夜の間に捕獲してそこで泊まって、朝に測定するんですけど、宿舎じゃなくて河川の近くのとても目立つところで、わざとするんですけど。
複数:(笑)
高木:すると、近所のお年寄りたちが集まってきて、最近では、今日はどうやとか聞かれたりするので。そんな会話を、私じゃなくて、みんなとしてくれるし。それから、2024年の年末の調査の時は、下呂市長さんとお会いする機会があって、下呂市長さんはみんなの先輩なんです、大垣北高校の。
河合:そうでした。
高木:大垣北高校の後輩が下呂市まで来てくれて、交雑種をなんとかするということもそうやけど、研究でも成果を上げてくれてうれしいといってもらえて。なんか要求しとったよね、市長さんに。
河合:はい。予算のこととかです。
高木:例えば、最初のうちは女子もいるし、夜、お手洗いに行きたいんだけど、コンビニまで行くのに15分ぐらいかかって。
複数:(笑)
高木:オオサンショウウオ班では交雑種をなんとかしないといかんとか、オオサンショウウオを守らなあかんっていう気持ちですごく一生懸命やっているけど、すぐには伝わらないんですね。だけど、何回も何回も来て、で、こんだけ交雑種を捕獲できたよっていってくれていると、だんだんわかってもらえるようになってきて、お手洗いはここを使ってくださいとか、それから物置も用意してもえるようになって、毎回こっちから大量の荷物を持っていかなあかんので。
複数:助かっています。
高木:あとは、みんなは気がついていないかもわからんけど、いろんな人が調査に加わっとるやろ。で、明日の夜も調査するんですけど、実は大阪の人とか、あと、地域のみなさんもいろんな人がどうなっとる?って見にきてもらえて、菅田川のオオサンショウウオの保全活動の輪が広がっていて、高校生のパワーって本当にすごいし、地域のみなさんの期待に応えたいとどんどん成果が上がっているんですよ。
田中(信):高木先生にお聞きしてよかったです。みんなアピール不足やったね。
複数:(笑)
河合:ちょっと足らなかった。

どんなことでもいいので、
協力してもらえるとうれしい。
田中(信):SDGsも私が岐阜で初めて紹介したころは、まったく取り合ってもらえなかったんですが、今ではRe:touchのようにSDGsのプラットフォームを公開するまでになっているんですよ。
河合:そんな感じですね。
田中(信):こんなにいいことをやっているのに、どうして伝わらないんだろう。オオサンショウウオ班のみなさんもきっとそうだったと思うんだけど、一生懸命がんばっているうちは無我夢中でわからない。でも、周りをよく見てみると、みんなの思いが少しずつ伝わっているんですよね。
河合:そうなんですね。
田中(信):私たちの時代のイケメン俳優として有名な方が、岐阜県の郡上市に移住されているんですね。それで、どうしてここに来たんですか?って聞いたら、長良川の美しい自然を守りたいからだって。映画俳優が移住してきたってことで、少しでもアピールできたらって思っていたけど、自分の力不足を痛感していると話されていました。SDGsも大切だけど、岐阜県には長良川があるんだから、これをもっとアピールしなさって。
河合:だれだろう。
田中(信):この話を聞いて、私も自分が生まれ育ったふるさとをもっとよくしていかなければと痛感しました。TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)って聞いたことがあるかわからないけど、企業はオオサンショウウオ班のようなネイチャーポジティブにどれだけ寄与しているかを数字で表さなればならなくなっています。こうした企業に資金援助してもらいながら、一緒に生物多様性の保全を進めていくのもいいのかなって。
高木:オオサンショウウオ班のような保全活動に資金が必要なのはちゃんと理由があって、例えば、DNA解析だけでも結構な費用がかかります。現状は、本当に大学や研究機関のご厚意でやっていただいている状態なんですね。
田中(信):そうなんですね。
高木:また、いろんな補助金や支援金を活用するにしても、その申請に時間がかかったりと、高校生には負担が大きいんです。なので、先ほどのお手洗いの話じゃありませんが、どんな形でもいいので協力してもらえるとうれしいですし、そうしたつながりができていくといいと思います。
河合:お願いします。
田中(信):だけど、高木先生がおっしゃったように、資金援助してほしいのはもちろんだけど、まずオオサンショウウオ班の取り組みに賛同してもらいたい。やっぱり、その意味をわかってほしいね。
今回はこういう出会いをいただけて、みなさんありがとうございました。
複数:ありがとうございました。

TOPIC
オオサンショウウオ研究が全国から注目
2023年8月、大垣北高校自然科学部・オオサンショウウオ班は、岐阜県下呂市金山町を流れる菅田川で、外来種チュウゴクオオサンショウウオとの交雑個体を岐阜県で初めて発見しました。この発見をきっかけに始まった生息状況の詳細な調査を通じて、彼らは交雑がもたらす生態系への影響を明らかにし、在来種の保全のためには“サンクチュアリ(保護区)”の整備が必要であると提言しました。
この研究は、自然科学の探究心と地域への愛情に満ちたものであり、第67回日本学生科学賞において最高賞である「内閣総理大臣賞」を受賞。
また、朝日大学主催「ぎふ未来社会共創プロジェクト探求アワード2024」では最優秀賞を受賞し、大垣市主催「環境SDGsおおがき未来創造事業」では先進的な探究学習の実践例として発表されるなど、その活動は各方面から高く評価されています。
岐阜県内にはオオサンショウウオの専門研究機関がない中で、この研究は県内における保全活動の先駆けともいえる存在となっています。さらに、菅田川流域に今なお残る豊かな自然環境の価値に地域の人々も改めて気づき始めており、オオサンショウウオ班の活動は大きな共感と期待を集めています。
このように、岐阜県の自然と未来を守る高校生たちの輪が、今、着実に広がりを見せています。
朝日大学主催「ぎふ未来社会共創プロジェクト探求アワード2024」での発表の様子
大垣市主催「環境SDGsおおがき未来創造事業 成果報告会」での発表の様子
Company PROFILE
企業名(団体名) | 岐阜県立大垣北高等学校 自然科学部 オオサンショウウオ班 |
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校長 | 酒井 猛 |
所在地 | 〒503-0017 岐阜県大垣市中川町4-110-1 |
