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Interview
SDGsの先駆者に訊く

Re:toucher 51
起業したいという学生の
背中を押してあげたい。

岐阜大学起業部(岐阜県岐阜市)

株式会社artkake CEO 夏目 一輝さん[写真左]
多田 陸人さん[写真中央]
インタビュアー Re:touchエグゼクティブプロデューサー 田中 信康
SDGsターゲット
  • 08 働きがいも経済成長も
  • 11 住み続けられるまちづくりを
  • 17 パートナーシップで目標を達成しよう
※このターゲットはRe:touch編集部の視点によるものです
2020年、起業家精神を持った学生を育成する起業部が岐阜大学で立ち上がった。大学が公認する起業部としては中部で初めて。当初4人の部員でスタートした起業部だったが、3年後の現在では32人の学生が所属する。
岐阜大学の起業部では、東海地方では大きなビジネスコンテストである「Tongali」が登竜門となっており、これまでに数多くのTongali賞や企業賞などを受賞。すでに、起業を果たした学生も輩出している。
今回は、「artkake」のCEOで岐阜大学大学院生の夏目一輝さんと、「岐阜町なりわい会議」のメンバーで岐阜大学工学部2年生の多田陸人さんに、岐阜大学起業部や起業家活動についてお話を聞いた。

大学が公認する起業部は、
中部でも初めて。

田中:岐阜大学に起業部ができたのはいつですか?

夏目:起業家精神を持った学生を育成しようと、岐阜大学公認の同好会として2020年に立ち上がりました。大学が公認する起業部は中部では初めてでした。

田中:私も、当時、新聞記事を見て、あ、すごいなって思ったんですが、当初4人でスタートしたって聞いていますが、今は何人ぐらい所属されているんですか?

多田:32人です。

田中:みんな学部はバラバラですか?

夏目:医学部の学生もいますので、全学部の学生がいますよ。

田中:部長は何年生なんですか? やっぱり4年生ですか?

多田:部長は2年生です。

夏目:コミュニティをつくるのがとても上手な学生で、上級生にも下級生にもフランクに接してくれるので、それでちょっとずつ関係性ができているのかなって感じはします。

多田:岐阜大学の起業部は個人個人がそれぞれ目標を持っていて、それに対して否定をしないっていう文化があるかなと思っています

夏目:まったく否定しないですね。

多田:お互いがやっていることにリスペクトがあるし、だからこそちゃんと腹を割ってアドバイスできる関係にあるんですね

田中:起業部の顧問の上原雅行准教授が岐阜大学のWEBサイトで、起業部が大切にしているのは「Yes,and」(イエス・アンド)という相手の意見を認めたうえで自分の意見を主張する話法だって書いていらっしゃいますが、このことでしょうか?

多田:そうですね。

田中:これが起業部のベースにあるんですね。

多田:起業部は2020年にできて、学生の入れ替わりがあって、今では起業する学生が増えていっている段階ですね。

田中:1年生もいらっしゃったりするんですか?

多田:はい。1年生は4人です。その4人は、愛知県が進める日本最大のスタートアップ支援拠点「STATION Ai」が開催している学生起業家育成プログラム「STAPS」に参加しています。

田中:すごいね。

多田:先日その発表会に出ていて、1年目から気合いが入っています。

田中:すごいね。

夏目:本当にパワフルな学生が今年は入ってきましたね。

田中:起業家がビジネスアイデアを競うビジネスコンテストなんかも内容が充実してきているのもあって、そういうことに興味を持っている学生もどんどん増えているってことでしょうね

夏目:おもしろい流れだなって。起業部がある岐阜大学に入りたいって思ってくれる高校生が増えてくるといいですね

田中:それはそうだと思いますよ。だってまだ岐阜県の大学にはないでしょう?

夏目:岐阜県だとあんまり聞いたことがないです。

多田:愛知県はすごく活発ですね。

田中:高校生が大学を選んでいく1つのきっかけにもなってくるんでしょうし、スタートアップのしっかりしたプログラムを持っている会社なんかも、こういう学生を採用していきたいと思っているはずですから。それにしても、2020年に岐阜大学に起業部ができてたった3年で4人が32人になったとは、学生から注目されているってことですよ

複数:そうですね。

田中:岐阜ってあんまりこういうことに積極的でない土地柄なのに、そのなかで短期間にこれだけの学生が起業部に入ってきたんですから。

多田:そうですね。


起業へ向けたアイデアは、
ビジネスコンテストで磨く。

田中:上原先生のインタビューにあったんですが、最初にアンケートを取ったら、起業したいっていう学生がものすごくいたって。まずそのことに驚いて、こういう学生の背中を押してあげないといけないってお話されていました。お2人は、起業部に入るきっかけは何だったんですか?

夏目:私は、大学2年生まで名城大学にいて、そこでずっとボランティアをやっていました。宮城県で災害ボランティアをしたり、気仙沼市で復興ボランティアをやったりしていたんですが、復興ボランティアになるとただ体を動かしていればいいとかじゃなくて、もっとまちづくりの視点が必要だなっていうことを感じたんですね
それで、いろいろと大学を探していたら、岐阜大学でまちづくりが学べることがわかりました。岐阜大学に編入する前に何かスキルを身につけたいなって思っていたら、「想いを3カ月で形にする」ことをテーマにしたアクセラレータープログラムっていうのが名城大学にあったんですね。そこで、社会問題ってボランティアだけじゃなくて起業でも解決できることを知りました。
そのあとに岐阜大学に編入してみると、岐阜大学の起業部の部長と同じゼミだったりして、ちょっとやってみたら?っていう感じで、じゃあやってみようかって入りました。

田中:多田さんはどうですか?

多田:私が起業部に入ったのは、1年生の本当に入学して1カ月くらいのころです。岐阜大学に進学する前に、柳ヶ瀬商店街で空き物件や遊休不動産を使ってビジネスモデルを考える2泊3日の「リノベーションスクール@岐阜」というセミナーがあったんですが、それに参加して学生だけじゃなくて社会人ともつながれるきっかけになったんですね。
そのイベントに参加してみて、大人と関わりを持ちながら学生という身分というか、学生のパワーを生かして活動できるなっていうことに魅力を感じたので、起業部に入ったらそうした縦とのつながりもできるなっていうのと、あと同じような志を持つ学生と出会えるのも1つの魅力だなと思っていて、それで入部したって感じです

田中:お2人ともきっかけは違っても、根っこには共通点がいっぱいありますね。どうですか、とても刺激的だったんじゃないかな?

夏目:最初は刺激的でしたね、やっぱり。ただ、最初の最初は、起業部って聞くと怖そうじゃないですか、何か怪しい団体のように感じていましたので、ここにだけは絶対に入らないと思っていたんですが、本当にたまたま部長が同じ学部、同じ学科、同じ研究室で、アパートも隣の部屋だったんですよ。これは入るしかないって。 岐阜大学の起業部は明確にやりたいことを持っている学生ばかりじゃないんですが、ただ物事に対する見方みたいなのがこういうのもいいんじゃない?とかって、私にない視点を持っている学生が本当に多いなと思ったんで、すごくおもしろくて今もずっと楽しんでいますね

田中:名城大学に在学中に、気仙沼市で復興ボランティアをされてまちづくりの視点の必要性を痛感されて、アクセラレータープログラムでまちづくりに起業からアプローチできることを学ばれて、今もそういったテーマで活動されているんですか?

夏目:そうですね。最初は社会問題にボランティアで関わるって感じだったのが、今は起業でも解決できるのかなといろいろ探っています。

田中:岐阜大学の起業部は、みんなで一緒に何かやろうというのではなく、それぞれがテーマや課題に取り組んでいるっていう感じですか?

多田:起業部のなかでもみんながみんなリーダー格というか、先頭に立つような学生ばかりではないんですね。どちらかというとチームのサポートに回ったり、あるいはエンジニアに回ったりして、チーム全体の完成度を高めていくようにしたり、バックオフィスみたいな役割に強みを持ってる学生とかもいて、そうした学生がチームになっていたりすることもあります。

田中:そうなんですね。起業部としての年間の活動計画はあるんですか?

夏目:4月に新歓をやって、6月にTongaliっていうビジネスコンテストがあって、それが東海地方では大きなビジコンなので、それに向けてみんながんばろうみたいな雰囲気で取り組んだりして、8月には合宿をして。

多田:昨年は、高山市で合宿しました。

夏目:みんなで高山市に泊まって、高山市の地域課題を考えて、どう解決するかみたいなことをやりました。また、10月にはTongaliのアイデアピッチっていうのがあるので、そこに向けてちょっと練ってっていうような。

田中:じゃあ、年間計画のなかではTongaliが1つのアクセントになっていって、そこでアウトプットしていくみたいな感じですかね

多田:そうですね。

夏目:運動部のすごくでかい全国大会じゃないですが、そこに置いているのはビジコンのTongaliですね。

田中:起業部のなかには、いくつかチームみたいなものもあるんですか? 

多田:チームに所属している学生もいれば、そうでない学生も両方いますね。夏目さんのところでは「artkake」の活動をやっているんですが、そのなかに部員が何人かいたりしています。そうすると役割分担ができてくるので、チームとしてスピード感を持って取り組むことができるのが大きな特長かなと思います。また、まったく個人で活動している学生とかもいて、前部長とかもそうなんですが、自分1人でコミュニティを立ち上げて、東海地方の学生や社会人とかをつなげる大きなコミュニティをつくったりとか。本当に十人十色ですね

田中:じゃあ、何をやっているのかわからない学生もいるんですね。

多田:実際にいますね。

夏目:ただ、そういった学生は自分のやりたいことが明確に決まっていなかったりするんですね。そのため、とりあえず私のartkakeであったり、杉本稜太さんのUmai Japanであったり、初代部長の長曽我部竣也さんのFiber Crazeであったりと、もうすでに何かをやり始めた学生のなかにいったん入ります。そこで、スタートアップとはなんぞやとか、起業って何なんだろうみたいなのを知って、じゃあ自分で持ち帰って新しくみたいな流れが、今は多くなってきたかなと思います

田中:何となく楽しそうだから入ってみようっていう入り口の学生もいるでしょうから。

夏目:そう、そこが起業部のいいところかも。

多田:そうですね。

夏目:起業を絶対にしていないのが起業部のいいところで、起業という選択肢を持つことを理念にしているので、入り口のハードルは低くなっているのかなと思います

田中:起業部に入れば起業について学べますし、先輩について経験することもできますし、それぞれに取り組んでいることを尊重しているので、とても居心地がいいところですね。

多田:はい。

田中:そういうところが、新しい発想やアイデアにつながっていくんでしょうね。夏目さんは、すでに、artkakeを起業されているんですよね。

夏目:はい。


アート作品を無駄にしない、
「artkake」のビジネスモデル。

田中:起業されてどのくらいになるんですか?

夏目:会社としては1年ぐらいですね。artkakeを立ち上げたいと思うようになったのが、ちょうど岐阜大学に編入するタイミングでした。名城大学のアクセラレータープログラムに参加して、最初は、プラスチックリサイクルみたいなことをやってたみたいと考えていました。私が農学部だったんですよ。
それで、いろいろと悩んでいたら、姉が芸術大学に通っていたんですが、ちょっと気分転換に来たら?っていわれて、学生の作品展を見に行ったら、もうめちゃくちゃ感動して。同世代の学生がこんなに描けるんだって思いましたが、みんな捨てられちゃうってことを知って、何とかしたいなって。そこから数えると2年ちょっとになります。

田中:それが、アートとの出会いだったんですね。

夏目:本当にすごく感動しましたね。自分のことをこんなに表現できるんだって、これって何かに活用できないかなって。それで、岐阜大学に編入して、起業部に入部したんですが、まだ、具体的な解決策とか事業案とはなくて。芸術大学の学生のアート作品をもっと社会に出したいという課題はずっとあったんで、じゃあTongaliのアイデアピッチに応募してみようって、真剣に考えるようになりました。そこからは、本当にちょっとずつ事業に向けて進んでいったって感じです。

田中:artkakeには、起業部の学生もいるんですか?

夏目:はい、いますね。

田中:Tongaliのアイデアピッチなんかで、外部からの意見も聞きがながら、起業されたということですね。

夏目:最初は辛辣なことをいわれながら、でも、今となっては貴重な意見だったと。起業部のなかでも、そういう機会があったりしているので、すごくよかったです

田中:artkakeでは、具体的には、どういうことをやられているんですか?

夏目:artkakeは「才能を育て、文化を創る」というビジョンを掲げて、若手アーティストに発表の機会を提供するプラットフォームを運営しています。愛知県の「PRE-STATION Ai」というスタートアップ支援事業にも採択していただき、法人登記はそちらでしています。
具体的には、当初、学生のアート作品が捨てられてしまっているという課題を持って、じゃあ捨てられる前にデータ保存して、それを商品などのデザインとして活用してもらおうと。例えば、スマホケースのデザインに使用するとか、ほかにもグッズに使ってもらうとかやっていたんですが、これだけじゃあんまり社会にインパクトを与えられない、結局、アート作品が捨てられちゃっているという現実があって、今ではアート作品の共同保有っていうところに挑戦をしています

田中:共同保有?

夏目:これまでアート作品ってオーナーが1人っていうのが当たり前だったんですが、これからはみんなでシェアする、1口いくらっていう形でシェアする売り方を提案したいと取り組んでいます。音楽って特定のだれかのものになることってほとんどないと思うんですが、アート作品においても共同保有できるようにしていきたいと考えています。
そうすることでアート作品を定量的に見られるようになるので、今までならオーナーが1人買うと1人、関係人口は1人だったんですが、みんなでシェアすることでこのアート作品の関係人口は何人ってなりますね。その関係人口に応じてじゃあこれだけファンがいるんでファッションとコラボしませんかとか、ホテルのロビーに展示してみませんかとかいうように定量的な数字から結びつけるっていうのを、実証実験をしながらやっている感じです。

田中:すばらしい。スマホケースのほかには何かあるんですか?

夏目:そうですね。いろいろ作ったりしていて、バッグなど5、6種類ぐらいありますよ。JR東海さんのECサイトである「JR東海MARKET」でも販売をさせていただいています。


アーティストの発表の場として、
「アトコレ」を開催。

田中:JR名古屋駅の中央コンコースイベントスペースで、「メイエキ+アトコレ 駅の美術館」を開催されて、学生のアート作品を展示されたんですよね。

夏目:もうこれ以上ない立地でやらせていただいたんですが、そのときは1日に1,000人以上の方が来てくださって、その1,000人っていうのもちゃんと中に入ってじっくり見ていただいた方で。アンケートとかも取らせていただいて、いろいろなデータを入手することができました。
私たちとしても実証実験でデータを取りたかったので、すごく参考になりましたし、アーティストの方々にとってもあの場所で展示できるっていうのは滅多にないことなので、すごく満足度が高くて、本当によかったですって連絡をもらいました

田中:アーティストにとっても、たくさんの方に見てもらう機会になって、大満足だったでしょうね。

夏目:そうですね。

田中:それが、artkakeの役割なんですね。

夏目:今まで展示できなかったような場所を使わせてくださいみたいな感じで交渉しました。

田中:artkakeでは、どのようなスキームでアーティストに発表の機会を提供しているんですか?

夏目:アーティスト登録みたいなのを弊社でやらせていただいていて、今では120人ほどのアーティストに登録していただいています。

田中:たくさんのアーティストが登録されていますね。

夏目:artkakeではアーティストの発表の場として「アトコレ」を開催していて、例えば、先日もJR名古屋駅で第2回アトコレをやりますって公募したんですね。30人のアーティストを募集したんですが、実際は33人のアーティストが集まりました。
アート作品って定性的に評価されることが多いんですが、私たちは33人のアーティストのなかでスマホケースやバッグなどグッズを1カ月間販売して、その売上の多いアーティストには原画を展示するスペースも大きくすることにしています。
これまでなら主催者などが事前に審査して展示するような流れだと思いますが、その逆でマーケットが評価したアーティストのアート作品がわかるようにして展示することにしました。そのうえで、アートピッチというプレゼンテーションをアーティストにしてもらい、外部の審査員に最終審査してもらおうと考えています

田中:第1回のアトコレではユニークなデータが取れました?

夏目:次の検証につながるデータが取れました。

田中:JR東海さんはどういう立ち位置でしたか?

夏目:今回は、ジェイアール東海エージェンシーさんと弊社で共催という形でした。金銭のほかにもいろいろと協賛していただきました。例えば、スペースさんという会社には展示什器だったりと、だいたい10社ほど協賛していただいた企業がありました。

田中:すばらしい。とても画期的ですよね。

夏目:ありがとうございます。

田中:これまでの商取引みたいなものにも注意が必要ですよね。

夏目:私もそこはすごく難しいところだと思っていて、こうした分野の方たちともちゃんとすり合わせをしながらやっていきたいです。ちょっとずつ画商さんとか画廊さんと関係構築して、こうしたアート作品をたくさんの方に触れてもらえるようにしていきたいですね

田中:びっくりしました。想像していたより数段上のことをされていますね。こんなことをされている学生はいますか?

夏目:Tongaliとかうちの起業部みたいなものができてきたんで、本当に社会問題を掘り下げて掘り下げてっていう学生が増えてきたかなって、肌感ですけど、ありますね

田中:アートの視点でっていうのはどうですか? 

夏目:アートは本当にいないですね。そもそも接点が少ないみたいなところがあるので、ニッチといえばニッチですよね。

田中:登録されるアーティストも驚きますよね。今までとはやり方が違うので。

夏目:アーティストも価値観が変わってきていまして、私がアーティストとコミュニケーションするなかで感じているのは、Instagramなどでも「いいね」とかもらえるようになったと思うんですが、そうなると駅とかショッピングモールとか人通りが多くて見てもらいやすいところじゃないと、Instagramでも「いいね」とかもらえないみたいなのがあったりして。そっちのニーズに私たちは寄り添っているって感じですね。


「岐阜町なりわい会議」で、
築100年以上の町屋をリノベ。

田中:東京駅のヘラルボニーもまさにそうで。私はアート作品には知見も何もないんですが、何だろうこれと思って、立ち止まって見たらすごい興味が湧いて。調べてみたら、すげえなと思って。で、そこに関わっている方が岐阜にいたっていう。アート作品って敷居が高いっていうイメージがあったんですが、いろいろな感性を持った若い人たちがSNSを活用するようになって、少しずつ変化しているような気がしています
さっきの起業部ではお互いを否定しないじゃないですが、若い人たちがどんどんやりたいことをやれる社会になっていけばいいですし、自分のやりたいことを探している若い人たちが増えてきたのはいいことだと思います。日本のアーティストも捨てたもんじゃないいうところまで来ればいいですね。
それでは、今度は多田さんに話をお聞きしましょう。さっきのリノベーションスクール@岐阜について教えてください。

多田:はい。リノベーションスクール@岐阜は、どちらかというとデザイン会社や建設事務所の方などが参加するようなセミナーで、私は高校生だったんですが、高校生で参加しているのは私1人でした。最後に私のグループの発表を私が行ったんですが、そのときにすごい反響をいただきました。
私がグループのなかで一番若くて、それはウイークポイントなのかなと思っていたんですが、年齢って関係ないなっていうことに気づきました。それから自信を持って、まちづくりというか、まちづくりっていう言葉があんまり好きではないんですが、まちがもっとおもしろくなるような仕掛けを継続的にやっていますね

田中:柳ヶ瀬商店街にはこだわらずですか?

多田:そうですね、そこにはあんまりこだわらず、声をかけてくださった方と一緒に。例えば、今でいうと岐阜町と呼ばれるエリア、伊奈波神社だったりとかその辺りのエリアなんですが、そこでビルのリノベーションや築100年以上の町屋のリフォームなどを行っていて、そこをシェアハウスと複合のテナントビルというか遊び場のような空間にしようと

田中:あの辺りもすごく変わろうとしていて。この間も、フォーのお店がオープンしたんですよね。それは、もう立ち上がっているんですか?

多田:はい。岐阜のまちって新規で創業される方が、最近すごく増えてきたなと思っていて。というのも、官民が連携してその土壌を整えてくれていて、そこにプレーヤーが乗っかっているっていう段階で、市民レベルでも何かまちに対していい働きかけができないかっていうのをやっています。それが、「岐阜町なりわい会議」です。

田中:それは大人たちのコミュニティですか?

多田:そうですね。岐阜で暮らしたりとか働いていたりする大人で、10人前後で構成しています。そのメンバーで、先ほどの2つの物件をリノベーションしていて、出店者さんや入居者さんを斡旋するようなことを進めています。

田中:何かおもしろそうですね。一応、岐阜にこだわりながら、いろんな実証実験をしながら、とにかく広げていこうってことですね

多田:そうですね、はい。

田中:岐阜市でも柳ヶ瀬商店街の再開発には力を入れているし、いろんなプレーヤーがいろんな視点で関われるようになってきているんですね

多田:そうですね。柳ヶ瀬商店街とかも特にそうなんですが、本当にいろんなプレーヤーのみなさんいらっしゃいます。それぞれが別々のことをやってはいるんですが、それが結果として、柳ヶ瀬に例えば人が来るきっかけになったりとか、そこで1日過ごせばそこにお金が落ちる。それぞれがやってることは違いながらもめざしてることは同じというか、ボトムアップの動きが最近は多いかなと思っています

田中:岐阜といえば飛騨高山、白川郷、で、次が鵜飼とか飛騨牛とかいうなかで、岐阜市が今すごく変わろうとしているのは、目に見えるところでも例えばビルやマンションが建ったりしているのが大きいんでしょうが、そうじゃないところでも変わってきている感じっていうのを実感しているんですね。

多田:そうですね。私も岐阜に来て1年半経ちますが、この1年半のなかでもやはりみなさんのリテラシーみたいなものが高まっているなっていうのを感じていて

田中:ああ、それはいい話ですね。

多田:で、私も学生という立場でNPOのみなさんだったりとか、あと、企業のみなさんとかと一緒に、何かお手伝いできることがあればそこに行ったりしています。やっぱり、そのエリアに対してどんな価値を提供できるかっていうことをみんなが考えるようになってきて、で、その気持ちを私も持てるようになっているんで。

田中:そのきっかけが、リノベーションスクール@岐阜だったと。

多田:そうですね。そのグループで考えたアイデアがすごく評価されて。途中、厳しい意見をいわれたりしたんですが、最終的にはよさそうだねって。で、その2カ月後には、実際にそこでイベントを開催する流れにもつながっています。そうしたところから、自分がこのまちをおもしろくしてやろうっていう気持ちが湧いてきたのかなと思います


起業部をホームにしながら、
いろんなことろへ飛んでいく。

田中:すごい。何かお2人の話を聞いていると、ジェネレーションギャップっていうのはほとんどないっていう感じなんですかね。学生だからという視点があんまりないかなって。むしろ、新しいっていうかこれまでにない観点の意見を欲している社会があって、そこにすごくうまく適合している。いろいろ苦労もあるんでしょうが、それを認めてもらえる空気になっている。ここで学んだことが、社会人になったときにもきっと役立つ、そんな感じなんですかね

多田:そうですね。どうしても大人のみなさん、例えば、90年代とかに入社して20~30年勤め上げてきた方だと、社内の文化とかが染みついちゃっていたりして、なかなか難しいんでしょうね。

田中:ね、固定観念とかね。

多田:はい。ただ、私たちは学生であってまだまだ知らないこともありますが、その分、伸び伸びと考えられるっていうところは大きいかなと思っています

田中:でしょうね。

多田:私たちは、大人のしがらみとか考えずに動けているなって気はしますね。ただ、そういった変化っていうのはよそ者であったり若者であったりと、ある意味、異質といわれるような者が、世の中にうねりを起こしていくんじゃないかなって思っています

田中:多田さんはどちらの出身?

多田:三重県の四日市です。

田中:お2人とも楽しそうですよね。

夏目:めちゃくちゃ楽しいです。

田中:どこかの会社に勤めるなんて、今はあんまり考えていないでしょう?

夏目:ないですね。

田中:起業部の学生たちって、自分で何かやってやるっていうマインドになっていらっしゃることが多いのかな?

夏目:そっちの方が多いかなとは思いますね。

田中:岐阜大学の起業部は、ちゃんと社会の現場に出ていろんなことにトライしているのがすごいですね。

多田:起業に片足を置きながら、片足をいろんなコミュニティに突っ込んでいる。起業部をホームにしながら、いろんなところに飛んでいくみたいなイメージですかね

夏目:お互いを認め合うっていう文化があるので、そんなことを始めたの?すごいじゃんみたいに、みんな声がけしてやっていますよ。

田中:いいね。なかなかできないね。

多田:本当に、来るもの拒まず、去るもの追わずというか。

夏目:そうですね。

田中:起業部のなかで競い合ったり、変な干渉をしないんですね。

多田:そういった他人に対するリスペクトみたいなのは、創業メンバーだったり、あとは上原先生とかが、きちんと理念を持って、今に引き継いでくれたのかなって。

田中:この3年間でそういう空気をつくったのはすばらしですね。しかも、この岐阜でっていうのが、私はすごく興味深い。人材育成の1つのモデルケースとしてもね。夏目さんのほかにも、長曽我部竣也さんのFiber Crazeのように起業されている学生もいるんですもんね。

夏目:それは、初代部長です。あとはLiemPiaっていうのとか、Umai Japanというのも今年の7月に立ち上がっています。柿のブランドを海外に輸出しようってがんばっていますよ。

田中:へえ。ブランディングをやっていこうと。

夏目:そうです。柿とかだと岐阜は強いと思うんですが、それを広げていこうっていうので。

田中:そういうことって、みんなどこで共有しているんですか?

夏目:ビジコンもそうですが、十六銀行さんのNOBUNAGAキャピタルビレッジが部室になってまして、で、あそこでわりとみんな仕事というかいろいろとしていて。

田中:人や情報が集まってくるんですね。

夏目:そうですね。

田中:NOBUNAGAキャピタルビレッジさんは、そうした場所を提供しているだけなんですか?

夏目:基本的には場所を提供してもらっていて、コワーキングスペースやシェアオフィスみたいな感じで。で、あとはブラッシュアップ会ですね。だれかのアイデアをブラッシュアップしようってなったときに、ここでやると立地的にいいので集まりやすいんですよ

田中:NOBUNAGAキャピタルビレッジさんからも参加されるんですか?

夏目:サポートしてくださるっていう感じで、こういうことやってみたいんですがとかいうと、じゃあ、こういう人が前にいたよとか、話してみる?みたいなことをしてもらっています。

多田:コミュニティマネジャーと呼ばれる方も常任でいらっしゃるので、その方がお互いにメリットのあるAとBをつなげてくれたりしています。


みんな好きなことしていて、
本当におもしろい。

田中:それでは、夏目さん、多田さん、それぞれの今後のビジョンを教えてください。

夏目:岐阜大学の起業部に入ると、一気に視野が広がるじゃないですが、いろんな選択肢がばーっと出てくるみたいな感じなので、やっていることは本当に千差万別だと思います。ただ、根本をたどると起業部っていうのがあるので、それで起業部でちょっとご飯でも行こうかって

田中:刺激になりますよね、お互いに。

夏目:お互いが違うことをやっていっていて、何か振り返ると起業部があったよねみたいな立ち位置になっていくのかなとは思いますね

田中:夏目さんと多田さんも、アートとまちづくりって関連性があるようなことだし、お互いが行き詰まったときに、そういうご飯を食べながら話したことから、次の視点に切り替わっていくことがあるでしょうから。

多田:それは、ありますね。

田中:いいね。私も入りたいな。私たちのときなんか、全然、そんな考え方がなかったし、社会課題を解決するなんて視点が当然なかったんで。

夏目:そうなんですね。

田中:岐阜ではこういうところが少ないので、地域社会から注目される存在になっていますよ。私も岐阜ですごいことやっているなって思って、まだ数人と聞いていたのが30人以上って知って本当に驚愕しています。で、夏目さんにお会いしたら、名刺にartkakeって書いてあって、あれ?何だろうって思って。

夏目:年齢も学年もある意味関係なく、みんなが好きなことをやっていくみたいな。本当におもしろくて。

田中:あんまりこっちに比重がいくと、学生の本分である勉強の方がね。

夏目:みんな休学するんですよ。

多田:そうそう。

田中:やっぱりそうなるよね。

夏目:今、4社立ち上がっていて、4社中3社の代表が休学してやっていました。

田中:そんな中途半端な首の突っ込み方できないもんね。

夏目:難しいですね。私は休学せずに死にそうになりながら。

田中:すごい。

夏目:授業がたくさんじゃないので。

田中:やっぱり、起業したいって思いを持って編入してきたから強いんでしょうね。

夏目:本当によかったです。岐阜大、いいなって。

田中:人生の転機っていろんなところにあるってあらためて感じました。気仙沼市での震災ボランティアの話がありましたが、そういうボランティア活動をしていた若い人たちはどうなったんだろうと思っていましたが、アントレプレナーで新しい会社を起こしているんだって大きな気づきがありました。震災が1つのきっかけになったりしていて、何かしなきゃって心を揺り動かされたところから、あれ?っていうようなところで、体を動かすだけじゃっていうので、今の夏目さんたちもそうですが、とてもユニークだなと思います。 well-beingとか、いろんな言葉が出てきてはいますが、理想と現実っていうのがどうしてもあるので、大きな会社ではやっぱりできちゃっているカルチャーのなかで、意外と壁をぶっ壊すのが難しかったりするんですよね。だから、学生が自分がやりたいことをできる会社をチョイスする時代というか、そういうシステムが出来上がったところじゃないとそもそも選ばないというところに、そろそろ差しがかってきてるのは間違いないですよね

多田:確かにそうですね。

田中:artkakeは1年経ったんですが、これをずっとやっていこうと思っているんですか?

夏目:ここからずっと、どんどんやっていこうと思って。

田中:楽しみにしています。私たちも、何か協力できることがあれば、ぜひともと思っています。

夏目:鉄道会社さんにとどまらず、空港さんとかにも広げていきたいですし、まちづくりとしても展開していきたいです。私の学部がそういうことを学ぶところなので、岐阜でもどんどんやっていきたいです。

田中:ああ、すばらしい。

多田:この秋に、「Art Life Gifu」っていって、岐阜市のさまざまな建物だったりとかでアート作品を展示するイベントを同時多発的に開催するんですよ。そうしたなかで、普段アートに興味を持っていない方でも、ちょっと立ち寄ってみるかみたいな。このビル、何か気になるものが置いてあるなみたいなのを、ちょっと歩いて回ってみると、まだ知らぬまちの魅力に気づいたりとか、それこそ夏目さんみたいに、あ、アートってこんなにすごいんだって感動する方がたぶん増えてくると思うんですよね。

田中:本当にそうですね。いわゆる伝統とか文化とかいうものって、今、伝えていかなきゃいけないのは、これから生きていく世代の人たちなんで、若い人たちに理解してもらえるようにするには、若い人たちをどんどん巻き込んでいかないと変わりっこないと思いますね

夏目:そうですね。

田中:もっと若い人たちの方を向かないとね。

多田:そうですね。「岐阜町なりわい会議」もまさにそんな感じです。私たちは私たちでちゃんと新しいものをつくっていこうっていう思いを持った仲間たちと一緒にやっています。

田中:すごいな。

多田:アートギャラリーをやっているニュー銀座堂の渡邉百恵さんと一緒に、長良川の北で日曜日にマルシェやったりとか。

田中:そういう思いを持っている人たちがいるっていうのはすごく可能性を感じるし、どんどんそういうのが認められる岐阜になっていけば本当にいいなって思いますね。何か私たちにサポートできることあったら、気軽に声をかけてください。

複数:ありがとうございます。

田中:私たちは意義のあるものや、社会インパクトをどうやって創出していくかってことにも、実証的な考え方を持っているし、これをご縁にいろいろ広げていくことができたらないいなと思っています。

複数:ありがとうございました。

TOPIC

  • 08 働きがいも経済成長も
  • 17 パートナーシップで目標を達成しよう
※このターゲットはRe:touch編集部の視点によるものです
起業家精神のある学生を育成する
岐阜大学起業部。
2020年4月、中部では初めてとなる大学公認の起業部として創設された岐阜大学企業部。顧問である上原雅行准教授が大切にされているのは、「Yes,and」(イエス・アンド)という相手の意見を認めたうえで自分の意見を主張する話法。そのため、岐阜大学の起業部では、個人が進めていることをお互いに否定しないことが、いつしか不文律として定着した。
そうした岐阜大学起業部の自由な空気を思いっきり吸った学生たちが、次々と社会課題をとことん掘り下げた事業や会社を立ち上げている。東海地方では大きなビジネスコンテストである「Tongali」でも岐阜大学起業部の実力は証明ずみで、学生たちがそれぞれの意思と行動を頼りに新たな価値の創造に取り組んでいる。設立当初4人だった部員も現在では32人を数え、起業に向けて背中を押された学生たちが世に羽ばたこうとしている。

Company PROFILE

団体名 岐阜大学 起業部
顧問 岐阜大学 高等研究院 准教授 上原雅行
所在地
(岐阜大学)
〒501-1112
岐阜県岐阜市柳戸1番1

Re:touch Point!

大人たちが否定してきたことが、学生の可能性を潰しているのかも。

Re:touch
エグゼクティブプロデューサー
田中 信康
岐阜大学に起業部が設立されたと聞いて、また、大学が公認する起業部としては中部で初めてと知って、とてもびっくりした記憶がある。あれから3年、今回、取材させていただいて驚愕した。夏目一輝さんの「artkake」も、多田陸人さんの「岐阜町なりわい会議」も、私の想像と期待の遥か先を行っていた。岐阜大学の起業部には、そんな起業家をめざす学生たちがゴロゴロいた。
岐阜大学起業部は起業することを前提にしていない。アントレナーシップを持った学生を育成することをめざしており、自分がやりたいことが見つかっていなくても、先輩たちの生きた教材から起業について学ぶことができる。ここで経験したことは、社会人になっても必ず生きてくる。むしろ、これからの学生たちは、スタートアップのしっかりしたプログラムのない企業を選択しなくなるような気がする。
岐阜大学の起業部は、人材育成のモデルケースとしてもとても興味深い。上原雅行准教授の「Yes,and」(イエス・アンド)が不文律となっているが、私たちが日ごろ活用しているブレーンストーンミングという発想法も、他人の意見を批判しないことがルールになっている。大人たちが過去の経験から否定してきたことが、若い世代の未来の可能性を潰しているのかもしれない。