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Interview
SDGsの先駆者に訊く

Re:toucher 43
自分の生き方が学べる、
音楽にはその力がある。

岐阜市立陽南中学校(岐阜県岐阜市)

教諭 上田 祐子さん
インタビュアー Re:touchエグゼクティブプロデューサー 田中 信康
SDGsターゲット
  • 04 質の高い教育をみんなに
  • 17 パートナーシップで目標を達成しよう
※このターゲットはRe:touch編集部の視点によるものです
2023年1月、全国「授業の鉄人」コンクールが岐阜聖徳学園大学で行われた。このコンクールでは毎年、ユニークな事例が発表されているが、今年度、最高賞である鉄人賞を受賞され、10人目の授業の鉄人に選ばれたのが、岐阜市立陽南中学校で音楽を教える上田祐子先生。陽南中学校で唯一の音楽教師であり、自分の教材選びや教材配列が本当に正しいのか自問するなかで、教育関係以外の審査員からも評価されたことは励みになると話す。
中学生にとっては難解な能の敦盛を、アメイジング・グレイスやレット・イット・ビー、ボレロと、世界の音楽というくくりで1本の線にして教材配列した。「中学校を卒業したら、みんなも社会人になるんやよ、自分の考えを持ってほしいんやて」。授業での発問を工夫することで、生徒たちが自分の生き方を学べるようにしている。今回は、中学生という多感な時期の子どもたちと、音楽の授業を通じて信頼関係を築いていった上田祐子先生にインタビューした。

2023年1月 第10回全国「授業の鉄人」コンクール 表彰式の様子

全国「授業の鉄人」コンクールで、
最高賞の鉄人賞を受賞。

田中:2023年1月に行われた全国「授業の鉄人」コンクールで、最高賞の鉄人賞を受賞されまして、本当におめでとうございます。

上田:ありがとうございます。

田中:私も審査員として参加していたんですが、私が講評した先生の受賞が続いているんですよ。

上田: 私はラッキーでしたね。陽南中学校では、音楽の教員は私1人なんです。

田中:そうなんですね。

上田:毎年、私の感性で教材選びや教材配列をしていていいのかなって、すごく責任を感じているんですよ。なので、田中さんみたいな教育関係じゃない方にそういってもらうと、私にとっては本当に大きな一歩なんです。ああ、よかったって思って、子どもたちにも自信を持って、ほらね、みたいな。

田中:私は、音楽はあまり好きじゃなかったんですが、小学1年生の時に担任の先生から、あなたは音楽の素質があるから音楽をやりなさいって。あなたはピアノが天職なんで、最終的にはピアノをやりなさいっていわれて、一時期、プロのミュージシャンをやっていたこともあるんですね。上田先生の発表を聞いたり資料を見たりしていて、上田先生の授業との出会いで生徒の感性が磨かれて、それがきっかけで生き方が変わることもあると思っています。

上田:ありがとうございます。

田中:以前からいろいろとトライアルされていたんですか?

上田:はい。いろいろとやってきたなかで、今回の授業の鉄人の受賞となりました。今年度から教科書の改訂があって、私なりに考えた教材選びや教材配列にしました。これが、子どもたちのフィーリングともぴったり合って、一緒に成長できたかなって思っています。

田中:今では、中学校の音楽の授業で「能」を学ぶんですね。私の時代にもあったんですか?

上田:田中さんの時代はなかったんですが、現在では、歌舞伎や能が教材群のなかに入っているんですよ。ただ、子どもたちも最初は能に戸惑って。先生、能って何?って。触れたこともないし、聴いたこともないし。歌舞伎なら役者さんがテレビのバラエティーに出演していて、ある程度のことはわかっているんですが。

田中:中学生なら当然そうなりますよね。

上田:子どもたちには難しいかもしれませんが、世界の音楽の1つとしてとらえるっていう視点もあるし、中学3年生は卒業したら社会人になっていくんですね。それなら、日本の美しさ、日本人らしさ、日本のよさって何?って聞かれた時に、ちゃんと自分の言葉で答えられるような人であってほしいから、能についても学んでもらおうと学習を進めました

田中:そういったところまで考えられているところがすばらしい。それがちゃんと伝わってくる授業でしたね。上田先生の発表が終わった時に、コンクールの会場がざわついていましたよ。

上田:今年度、教科書が改訂されるまでは「羽衣」で、美しさを強調するような教材だったんですね。

田中:「敦盛」の前は、「羽衣」だったんですね。

上田:はい。その時は、美しいものっていうことで、日本らしさみたいなものにつなげていました。ただ、私は音楽を通して子どもたちの感性を磨きたいって思いがあるので、どうしても音につなげられない自分がいて悶々としていました

田中:音楽の教師として壁にぶつかっていて、自信を持って授業に臨めなかったんですね。


あの子たちがいたからこそ、
私も工夫することができた。

上田:ところが、今年度から教材が「敦盛」に変わり、平家物語とのつながりがもてるということで、これは人の生き方に関わってくると思って。そうすると、あ、「アメイジング・グレイス」や「レット・イット・ビー」もつながってくるやん。あれ、もしかしたらいけるかもっていうことで、あの教材配列になりました。

田中:上田先生にとっては好都合でしたね。

上田:はい。そうすると、能も世界の音楽の1つとしてとらえていけるし、そこから広がればほかの音楽も聴いてみたいとか、ほかの国って、先生、どうなんですか?ってことにもきっとつながってくる。私の発問次第だなっていうのが見えてきたので、題材プリントにあるような流れにしました

田中:私はビデオでしか授業の様子を見ていないんですが、それでも生徒たちの胸に響いていることがよくわかりました。

上田:でも、これも子どもたちがいなかったらできなかったことで。子どもたちの感性と素直さと、そして、生徒と信頼関係を築けたことに感謝しています。あの子たちがいたから私も工夫ができたし、どうしたらもっといろんな視点でとらえられるかとか、子どもたちが感じたことを受け入れられるかとかまで考えて発問することができました

田中:そうですね。発問を工夫をされていることをすごく感じました。生徒たちからも多様な意見が出ていて、今の中学生ってこんなことをいうのかって、かなり驚きだったんですが

上田:こういう考え方や感じ方を私は求めていたし、こういう考え方や感じ方をしてくれたら、社会に出ても大丈夫だなって思っていました。ビデオを撮ってくれた先生は、実はあのクラスの担任だったんです。

田中:そうなんですね。

上田:はい。だから、あの子がこういう反応をしているんだっていう視点で撮ってくださったので、余計にわかりやすくて。で、その先生が授業が終わったあとに、「すげえ」っていわれたんですよ。あの子がああいうこというなんて、ぼくの授業ではないからって

田中:うまく引き出されているんですね。

上田:私の発問で引き出せたのもありますが、「そういうクラスにしたのは先生やでね」って話したら、「ありがとうございます」っていってくださって。そういう教員同士のつながりもあって、あの子たちも成長してくれたと思います

田中:いいですね。

上田:私の授業が、本当によかったかはどうかはわからないんですよ。でも、こうしたことをみんなで協力してやっていくと、子どもたちの考え方や感じ方に変化が生まれていくことを実証できたのではと、とてもうれしかったし、学校としても大きな自信になるなって思いました。研究推進委員長に全国「授業の鉄人」コンクールに出ないかといわれて、私は文章でまとめることがあまり好きではないので悩みましたが、授業の様子はビデオで見せますので大丈夫ですよって。じゃあ、やってみようかなって。

田中:全国「授業の鉄人」コンクールでは毎年、ユニークな事例が発表されていて、私もすごくおもしろいなと思っていたんですね。上田先生の授業では教育の在り方の一端を見ているようで、もう音楽の授業を超えているなっていうのが私の印象です。やっぱり、教え方1つで生徒の心を開くこともできるし、また、逆になることもありますし。本当に難しいですね

上田:今日の1時間でこれを感じ取ってほしいっていうものを1つ持って、いろんな考え方があってそれを結びつけるとこうなるよねっていう道筋を示してあげる。そして、これに着目してほしいっていうものを用意しておいて、そこに導いてあげることを、毎時間、大事にしながら積み重ねていこうと思っています。


音楽の背景を知ることで、
自分の生き方を学んでほしい。

田中:どんなところに苦労しましたか?

上田:やっぱり、どんな教材にするかとその順番ですね。どの授業で、どの教材で、何を感じ取らせて、それを積み重ねる。最後に、能でいろいろな生き方に触れて、音と関わらせて、ああ、そういうことかっていう着地点に持っていく道筋を考える時に苦労しましたね

田中:題材プリントにあるアメイジング・グレイス、レット・イット・ビー、ボレロ、能「敦盛」という順番で授業されたんですね。

上田:はい。年度の初めに、この題材プリントを子どもたちに配布して、授業のオリエンテーションをしました。教材を明記して、この教材群で、この力をつけたいと思いますって。

田中:子どもたちの目は能に釘づけになりますね。

上田:で、「能をやらないかんのですか」って。レット・イット・ビーを知ってる子は、「ビートルズと能とどうつなげるんですか」って。それで、「楽しみにしとって、おもしろいで」っていって。アメイジング・グレイスも人の生き方に関わるもので、神に許しを乞い、で、レット・イット・ビーで解散間近かもしれんっていうところで、レット・イット・ビーって、きっとよくなるっていう思いを込め、で、ボレロでまったく違う世界の音楽を体験し、「え、バレエの音楽なの?」って。こうやって結びついていくんやって。生き方、生き方、違う芸術との関わりを感じ取って、能に入って、舞もあり、日本でしか味わえない音が鳴る。で、この背景を学んだ時に、生き方につながることを知ることで、音とつながる。そのヒントを見つけた段階で、すごく子どもたちに感動があって。何でやるのっていうところから、ああ、だからかっていうものがあったから、余計にあの成長につながったんじゃないかって私は感じています

田中:これらを何時間の授業でやられたんですか?

上田:10時間で組んだんですが、そのあたりは臨機応変に。

田中:題材プリントを見ると、1時間ごとに授業の課題などがまとめられていますね。

上田:レット・イット・ビーも知れば知るほど、子どもたちが「おもしろい」って。「この曲のなかに「レット・イット・ビー」という言葉がどんだけ出てくるか知っとる?」って。すると、みんなで数え始めて。で、1フレーズの最後にレット・イット・ビー。2フレーズの最後にレット・イット・ビー。で、終わったかなと思ったら、レット・イット・ビー。なのに、「くどいなって思う?」っていったら、思わんって。「何で?」っていう話をした時に、ぐってくるんですよね、空気が。え、何で?って。「本当や」っていう、この感覚がもうたまらなくて。

田中:生徒たちが興味をもってきたんですね、上田先生の発問に。

上田:「周りとちょっと相談してみ」っていうことから、こうなんじゃないか、ああなんじゃないかって。「そもそもレット・イット・ビーって、これ命令形じゃない?」っていうと、「あ、本当や」って。「命令形って、何々しなさいっていう雰囲気、感じる?」 感じへん。え、「何で?」「何で?」っていう。そのやりとりが、もうたまらなくて。そうしたら、「もっと歌いたい」っていい始めて、ギターとドラムも入れて、で、鍵盤ハーモニカとか電子オルガンも入れて、そこに隠れ1時間があったりして。


みんなはもう社会人になるんやで、
自分の意見を持ってほしいんやて。

田中:私も、そんな教科書にはない音楽の授業を受けてみたかったな。

上田:とにかく中学3年生は卒業したら、みんなもう社会に出るんやで。だから、自分の考えを持てないとだめなんやて。自分はこうですっていえる人になってほしいという出口を考えているので、やっぱり楽しくないと自分の考えをいえないし自信も持てない。そうやって言えるようにしていかないと、次の意見や考えにつながらないし、それもあっての教材選びと教材配列だったんです。

田中:すごいですね。上田先生のなかに明確な目的意識があって、生徒たちを上手く導いていかれたと思っています。自分の考えを持ちなさいとか自信を持ちなさいというのは、企業経営の現場でも求められていることで。それを、音楽の授業のなかで楽しみながら学べるって、こんなにすてきなことはないですし、それがコンクールの時に感動を生んだんでしょうね

上田:ありがとうございます。

田中:こうした授業をもっと広げていってほしいと思っているんですが。

上田:ちょっと話が飛躍しますが、コロナの前にONE OK ROCK(ワンオクロック)とかアレキサンドロスとかが「18祭(フェス)」をやっていて。

田中:はい、はい。

上田:私、あれを授業でやりたいんです。授業で納得できる学習の積み重ねが自分でわかっていれば、次の授業に対する期待値が上がって、それが目的意識になって子どもたちが集まってきて、だれかれともなく、おお、すげえって授業の終わったあとにいえる。私がいうんじゃなくて、子どもたちに感じてもらえるような授業をしたいと思っているんです。で、それの1つの取っかかりにはなったかなって思うんですが、それをするにはさらにどうしたらいいかチャレンジしていきたいなって思っています。

田中:もう先を見つめているんですね。

上田:来年は1つの曲で子どもと対決したいなって。次の時間はこの人の生き方について賛否両論どっちかで討論しようって。ああ、こういう生き方もあるな。私には無理だな。で、私もどっちかに入る。で、音とつないで、それを1時間。

田中:おお、難しいな、これも。

上田:3年生でやってみたいなって。これ、「こうするで」っていう道筋を先にいっといて、「私を論破してみ」っていう賭けをしたいなと思っています。

田中:かなりアグレッシブな。

上田:それができたらおもしろいなって思って。ただ、全員でできるかなって、そこまで感性を上げていかないかんので。たぶん、感性を上げていけば通じるものがどこかにあるはずだから、それで雰囲気見ながら、今のってこういうことだと思わない?っていうヒントをあげれば、あ、そういうことかって、また広げていけるかなって

田中:おもしろいものができるかもしれませんね。

上田:はい。今の3年生もあれ以来、自分の発言のなかで歌って表現する子も出てきているので、あ、だいぶ自信ついてきたなっていうのを感じるので。もしかして来年いけるんじゃないかっていう期待をしていて、2年生がちょうどベートーベンの「交響曲第5番ハ短調」やっていて、もうベートーベンの生き方がもろに出る曲で、ちょっとずつ勝負し始めていて、3年生につなげるでっていって。

田中:一応、前振りはされてるんだ。毎年毎年、そうやっていろんなことを考えていて、大変ですね。

上田:もうね、楽しいんですよ。


SDGsを言葉で理解するのではなく、
自分で体験してわかってほしくて。

田中:コンクールの会場で上田先生に声をかけられた時にもいいましたが、SDGsが学校教育の現場にもどんどん入ってきていて。子どもたちの純粋でユニークで多様な意見に耳を傾けることに、個人的にはすごく期待感を持っているんですね

上田:あの時、田中さんに声をかけたのは、私はSDGsの、今の世のなかの多様性とか、持続可能な社会とかっていう言葉を理解するんじゃなくて、自分でやってみて、自分で体験して、これがSDGsのこういうことにつながるんやよとか、こういうことが考えられるから、持続可能な社会にするために1つの自分の考えが持てるようになるんやよって、子どもたちにわかってほしくって

田中:そこが、すぐ共感できる部分でした、本当に。

上田:そういう部分で、一度お話をしてみたいなって。ほかの学校さんのも見せてもらったんですが、ほかの学校さんのあの活動っていうのは、その後、どのように発展されているんですか?

田中:学校によってまちまちですが、継続的に関わってきています。今日も、大垣市の興文中学校に呼ばれたんですが、もう生徒たちが質問攻めにしてくるんですね。何でこんなことやってるんですか?とか、これって儲かるんですか?とか、何でローカルに徹しているんです?かって。SDGsの授業の感想文もぎっしり書かれていて。さっき、上田先生もいわれたように、SDGsはこんなことだと頭でっかちにならないで、まず行動をしなさいと。アクションをして、失敗もしなさいというところから、いろんなことを学んでもらって、実はこういうことが、こういうことにつながるんだよっていうのが、私も理想だと思っています。あと、SDGsを音楽でどうやって広めていくかにも取り組んでいるんですよ。野々田万照さんってご存じですか?

上田:はい。

田中:万照さんと一緒に、SDGsと楽しむ音楽っていうことをやってるんですね。ライブ形式で、ショッピングモールに行ったりとかして。

上田:あ、そうなんですか。

田中:SDGsの話をしながら、彼と2人で音楽を演奏して。音楽やってる時は皆さんわーっと来るんですが、SDGsの話になるとばらばらってなっちゃっているんですが。やっぱりこういうところでSDGsを身近に感じてもらいたいという思いがあって、ショッピングモールとかがなぜSDGsに取り組んでいるのかをお話ししながら、私たちが演奏する音楽に乗せてわかり合っていくってみたいな。主婦にレジ袋の有料化ってなぜやっているのかわかりますかというようなところからやっていって、そこに音楽を重ねていくと、主婦も勉強させられているのではなく楽しみながら頭のなかにふわっと入ってくるんですね

上田:そうなんですね。

田中:こういうことが岐阜のなかでつながっていくといいなっていう思いで、今日も上田先生に取材させてもらっているんですよ。

上田:いえいえ。本当にありがたいなって思っています。私も地域社会や企業が求めているものとかを知りたいし、音楽だからこそ伝えられるものもきっとあると思いますので、そんなところをまた共有できるきっかけになったらいいなって


自分の成長を実感できるなんて、
最高じゃない。

田中: 勝手ながら、上田先生とは相通じるものをすごく感じまして。今度、上田先生の授業を生で見てみたいです。

上田:子どもたちに3年間一緒に授業をやってきた感想を書いてもらったものを持ってきたんですが、この子は、江間章子という「夏の思い出」とか日本の歌曲を書いた人の考え方がとてもおもしろいと思って、自分が好きだったヨルシカの歌詞がどうしていいのかってことを考察していて。

田中:ああ、上田先生の授業がきっかけになって。

上田:はい。ただ聴いていてなんとなくかっこいいとかっていっていたけど、なぜそれがいいのかっていうことを考えることもおもしろいって。

田中:ほう。

上田:ほかにもこの子は、音楽には無限の可能性を感じたって。授業を通して音楽という教科がここまで自分を成長させ、心を育て、考えを広げることができたって。本当にやってきてよかったって

田中:すごいですね。またいっぱい書き込んでて、みんな。

上田:はい。自分で表現しなさいっていってるんですね。間違っていてもいいから、考えられること自体が価値のあることなんだから、表現しなかったらだれもわかってくれないよって、もう散々いってきて。

田中:生徒の生き方が変わりますよね、本当に。

上田:はい。音楽にその力があることを感じてくれているから、自分の成長もわかるし、歌詞から作者の思いを感じ取りたいって。作者の思いを感じ取ったら、さらに曲のよさがわかったと。何て奥が深いんだって

田中:ここに先生の言葉で書かれているように、成長を実感できるなんて最高だねって、本当そうですもんね。

上田:そうです。自分で自分をほめられるって。

田中:自信を持つことがなかなかできないんですよね、今の時代。それは社会がそうしてしまっているのかもしれないし、でも、実はそうじゃなくて、自信を持てばいいんですよね

上田:うん、うん。

田中:そのきっかけに、上田先生の授業がなっているんですよ、きっと。

上田:で、おもしろいのは、今、卒業合唱に向けてRADWIMPS(ラッドウィンプス)の「正解」を練習しているんですが、あの歌詞がまた子どもに刺さるんですよね。1+1=2っていう、そういう正解ばっかり求める学習を積み重ねてきたと。そうじゃなくて自分なりの正解を求めればいいんやって。そういう合唱をやっている時に、あなたの今の正解は何なのっていう問いかけをすると、子どもたちの気持ちが1つになるんですね。で、そのあとにもう1回やるよって歌うと、やっぱり合唱の輪郭がくっとまた引き締まるんですよ

田中:みんなの思いが伝わってくるようになる。

上田:もう何もいわなくても、自分の感性はこうっていうのを出してくれる。それができるのが音楽だと私は思っていて。で、言葉に出せなくても、合唱や楽器でも何でもいいんやけど、形で表してくれればそれでいいって。自分が伝えやすい道具を自分で探しなさいって。今は合唱を学年でやってるので、それが伝えやすいみたいですが。要所要所に、今のその選択は本当にこの曲のよさを考えた選択なのかって投げかけると、変わってくるんですよね、合唱が。もうね、やめられませんよ

田中:泣けるな、でも本当。さっきの話じゃないですが、もっともっと自分をしっかり出せる人たちを企業も求めているし、社会もそういう人材をやっぱり求めているのかなと

上田:はい。

田中:それこそ野々田万照さんとか、ポイント、ポイントで、呼んでもらってもいいですし、そういう機会があればおもしろいですよね。

上田:そうですね。また、はい。また。私、万照さんは知っていてもお会いしたことないんです、実際。

田中:私らもこういう取材を通じて、いろいろな協働につながっていったりとか、それは別にビジネスじゃなくても喜んでやらせてもらいます。

上田:ありがとうございます。

TOPIC

  • 04 質の高い教育をみんなに
  • 08 働きがいも経済成長も
  • 17 パートナーシップで目標を達成しよう
※このターゲットはRe:touch編集部の視点によるものです
創意工夫を凝らした授業で
現場の教師が実践力を競う。
全国「授業の鉄人」コンクールはNPO法人授業改革学会が主催しているもので、創意工夫を凝らした授業で現場の教師がその実践力を競っている。毎年、ユニークな事例が数多く発表されており、今年度は国内外から21人の応募があった。
2023年1月には、この最終審査に残った4人が15分の持ち時間で発表を行い、一般審査員とゲスト審査委員の投票で最多得票となった岐阜市立陽南中学校の上田祐子先生が最高賞の鉄人賞を受賞。なお、4人の発表資料は、学会誌の『授業文化』に掲載されている。

Company PROFILE

企業名(団体名) 岐阜市立陽南中学校
代表者名 校長 鬼頭 立城
所在地 〒500-8353 岐阜県岐阜市六条東1丁目1番1号

Re:touch Point!

音楽を通したSDGsの浸透に、ぜひ協働させてもらいたい。

Re:touch
エグゼクティブプロデューサー
田中 信康
今回、上田祐子先生のインタビューのなかで、『中学校を卒業して社会人になっていくには、自分の意見をしっかり持つことが大切。音楽の背景を知ることで、自分の生き方を学んでほしい。音楽にはその力がある』と聞いた。上田先生は授業の目的意識が明確になっていて、音楽の授業というより、教育の在り方を教えてもらったような気がした。
「授業の鉄人」コンクールが終わったあと、上田先生から声をかけてもらい、SDGsについて立ち話をした。SDGsを知識として学ぶのではなく、自分の経験のなかから SDGsにつなげていくことを、子どもたちにわかってほしいと、インタビューのなかでも話されている。
私も同感!岐阜出身のサックス奏者の野々田万照さんと音楽を通してSDGsを身近に感じてもらうSDGs a Live!の活動はその一環だ。
今後はぜひ協働させてもらいたい。