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Interview
SDGsの先駆者に訊く

Re:toucher 32
フェアトレードタウンを
めざしたまちづくりから
SDGsへ。

特別非営利法人泉京・垂井(岐阜県垂井町)

副代表理事 神田 浩史さん[写真右]
理事 内木 一久さん[写真左]
インタビュアー Re:touchエグゼクティブプロデューサー 田中 信康
SDGsターゲット
  • 01 貧困をなくそう
  • 04 質の高い教育をみんなに
  • 08 働きがいも経済成長も
  • 11 住み続けられるまちづくりを
  • 12 つくる責任 つかう責任
  • 13 気候変動に具体的な対策を
  • 17 パートナーシップで目標を達成しよう
※このターゲットはRe:touch編集部の視点によるものです

海外でODA(政府開発援助)や国際協力に携われてきた神田浩史さんが、岐阜県垂井町に移り住んできたのが20年ほど前。同じころ立ち上がった垂井町で初めての「NPO法人泉京・垂井」(せんと・たるい)の事務局長として、フェアトレードと地産地消を結びつけた活動に取り組んできた。毎年開催している「フェアトレードデイ垂井」は今年で10回目を数え、全国からの来場者が1万人を超えるイベントになっている。
垂井町のフェアトレードタウンをめざしたまちづくりは、今では揖斐川流域の「穏豊社会※1」(おんぽう)へとその活動の範囲を広げ、SDGsやサステナビリティへも波及。今年は、企業や事業者へもSDGsの非営利コンサルティングとしてアプローチする。泉京・垂井の運営は、30代、40代が中心のスタッフが合議制で行っており、神田さんが口を挟むことは少ないとか。物腰柔らかな京都弁の神田さんのお話をお聞きしていると、「神田教の信者」が集まってくるというのもうなずける。
今回は、NPO法人泉京・垂井が運営するアンテナショップ「フェアトレード&地産地消みずのわ」で、副代表理事である神田さんと理事の内木一久さんにインタビューした。

※1 揖斐川流域で持続可能な流域内循環型社会を、穏やかなことは豊かなことであるという意味で、「穏豊社会」と名づけてその実現をめざしている。

フェアトレードと地産地消を
結びつけて。

田中:泉京・垂井さんがどんなことをされているのかお話しいただけますか?

神田:泉京・垂井は、16年前にできたNPO法人で、垂井町では最初になります。私がちょうど京都の仕事が一段落したぐらいの時で、あんたNPOの経験があるんやで書類を作ってくれっていわれて。とても熱心なご年配の方がいらっしゃって、NPO法人として立ち上がったら、あんたが書類を作ったんやで事務局長をやってと。それが出発点ですね。私はその時、最年少でしたが。

田中:ずいぶん前から活動されているんですね。

神田:まちづくり事業や環境事業、下校時の子どもの青パト見守りをやっていたんですが、青パトだけは垂井町からの委託でしたね。垂井町は水のきれいなところなんで、水環境について情報発信を始めたら、学生さんなんかが集まってくるようになりまして、ご年配の方たちが抜けられていく代わりに、若い方たちが入ってきてくれて、その後、内木さんが入ってくれて、私が最年長ではなくなったんですが、気がついたら私が年上の方になっていました。

田中:若い方たちが増えてきたっていうのはいいですね。それほど魅力があるまちということですね。現在はどのあたりの年代の方が多いんですか?

神田:主力は30代、40代ですので。

田中:そうなんですね。

神田:私が事務局長として情報発信させてもらってきたのは、グローバルな課題と地域の課題を結びつけるようなことで、それが若い方たちを引き寄せてきたっていうのがあって、そのなかのひとつがフェアトレードなんです。フェアトレードと地産地消を結びつけてやったんですね。この「みずのわ」は人気のカフェがあった場所で、そのオーナーさんがすっごいまじめな方で、カフェが単にオーガニックな食材で食事を出すだけでは物足りないと、何か社会的なことをやりたいといわれて、それならフェアトレードでしょうっていったら、「うららか」という人気カフェがフェアトレードの拠点になりました。その方は今、伊吹山の西麓の甲津原で薬膳の専門料理のお店をやっていらっしゃって、薬草を自分で摘みたいので、垂井町にいたらそれができないからって。

田中:垂井町のフェアトレードタウンをめざされているのですが、当時は、フェアトレードってあまり知られていなかったじゃないですか?

神田:みなさんからよく心配されました。2011年に「フェアトレードデイ垂井」の記者発表をしましたら、新聞記者の方もあまりご存じなかったみたいで、私もとても不安になりましたが、今ではこのイベントに1万人の方に来ていただけるようになりました。

田中:ええっ! 驚愕ですね。そんなに来場者があるんですね。

神田:30代、40代の子育て世代が多いですね。フェアトレードに集まってくる方と話をしましたら、フェアトレードは安全安心だっていわれるんですよ。子育て中にはこういうことを意識されているんだって、これは浸透するんじゃないかと。

田中:10年やられたってことですよね?

神田:そうです。昨年がちょうど10年目だったんですが、コロナ禍で中止にしましたが。

田中:全国から来場されるんですか?

神田:そうですね、広島からとか。

田中:そんなにたくさんの方が来場されているとは知らなかったです。


SDGsをきっかけにして、
揖斐川流域を「穏豊社会」に。

神田:ほかにも、地域の環境活動をいろいろとやっています。西濃環境NPOネットワークという20ぐらいのNPOのネットワークに参画して、レジ袋の削減やマイバックは、この辺りでは2009年ぐらいからやってきましたしね。内木さんとの出会いはそれなんですが、3年ぐらい前から財務会計をやってもらっています。

田中:大垣市も2009年くらいから有料化になりました。

神田:輪之内町が一番早くて、それを広げていったって感じですね。垂井町なんかは商工会とかがやってくれましたね。そして、SDGsを始めました。それをきっかけに垂井町だけのまちづくりじゃなくて、揖斐川流域を視野に入れました

田中:揖斐川流域で持続可能な流域内循環型社会を実現しようというのですね。

神田:穏やかなことは豊かなことであるという意味で、「穏豊社会」と名づけているんですよ。

田中:これまでにどんなことをされてきたんですか?

神田:揖斐川の流域を3年間にわたって、環境省のサポートをいただいて、1年目は教材づくり、2年目は岐阜県と三重県の高校6校の生徒を、徳山ダムから桑名市まで揖斐川流域を見て回りました。そのあとに、SDGsワークショップで高校生たちに揖斐川流域をSDGs分析してもらい、3年目はその高校生たちが小学生の案内をするということをやらせていただきました。

田中:それは、おもしろい!

神田:揖斐川流域の拠点施設に行って話を聞いてもらって、高校生たちなりにSDGsのどのゴールと関連している活動かってことをですね。

田中:高校生のメッセージが全部入ってますね。

神田:これをきっかけに、私たちはSDGsの非営利コンサルティングを立ち上げますよということで、昨年、きれいなバナナペーパーでパンフレットを作りました。

田中:企業向けとか行政向けとかちゃんとあるんですね。

神田:今、こだわりのものをいろいろと扱っている生協グループさんで、SDGsの30年ビジョンづくりのお手伝いをさせていただいています。それから、揖斐川の源流に旧坂内村の諸家(もろか)というおもしろい集落があって、そこで国際協力とか地域づくりの人材育成事業をやりますって、昨年、国際協力機構(JICA)さんにご提案させていただきました。これが採用されて、JICAさんがやられるということで、すごい申し込みがありました。私自身、国際協力の現場でいろいろと失敗を重ねてきて、日本の地域社会でも同じじゃないかと。日本の地域社会でやることと、海外の現場でやることは、すごく共通事項があると気づいて、それをプログラム化したということですね。

田中:ローカルガバナンスですね。

神田:そうです。揖斐川町の旧春日村にある美束でも、昨年、1年かけて調査をしています。やっぱり、ローカルガバナンスは現地で見聞きしないと。あとは、アドボカシーという分野の日本のNPO、NGOのネットワークをつくっていまして、それの事務局がここなんです。地球環境基金という環境省系の基金をもってやっているんですが、アドボカシーの拠点が垂井町なんですよ。


垂井の泉のように、コンコンと
住民活動が湧き出る。

田中:ところで、「泉京・垂井」という名称には、どんな意味があるんですか?

神田:初期のご年配の方たちが、垂井町は泉が有名だから、泉は入れたいといわれて。垂井の泉のようにコンコンと住民活動が湧き出るような名前がいいねと。「泉都」(せんと)という意見もありましたが、京都の京と書いても「と」と読むから、その方がみんなに不思議がられていいんじゃない?ということで、「泉京」(せんと)に決まりました。ただ、京都の京と書いても「と」と読むのかは、いまだによくわかりませんが。

田中:これだけ長くやっていらっしゃると、垂井町や地域住民の方にもしっかりと根づかれているのではないですか?

神田:フェアトレードタウンをめざしているのがすごくよくて、いろんなお店と一緒にできたり、フェアトレードタウンは商工会や社会福祉協議会、垂井町と一緒にやっていて、それ自体がすごく大事なプラットフォームになっていますね。地域住民の方とも自治会に法人として入れていただいているので、お付き合いはあったりしますが、大きくはプラットフォームをつくって、それぞれのコミュニティをつくっていくというやり方になっていますね。小さなマルシェ「みずのわ市」を3カ月に1回やっているんですが、みなさん楽しみにしていただいています。

田中:ワークショップもやられているんですよね。

神田:ここでやる時もありますよ。昨年からの特長としては、垂井町のまちづくり事業のIT化を依頼されることもあります。オンライン配信をやりたいといった時に、垂井町のWi-Fi環境は制約があったので、私どもに委託いただいて。そうすると若いスタッフが多いと、みなさん安心されますね。

田中:いいですね。後継者不足で悩まれている方が、たくさんいらっしゃいますから。

内木:神田さんの能力の高さに集まってくるというか、先ほどの2人のスタッフも名古屋出身なんですよ。

田中:フェアトレード・地産地消のマップも充実していてすごいですね。

神田:あと、揖斐川町にあるお菓子屋さんがちょこちょこ来られて、新商品の相談をされていくんですよ。フェアトレードの素材を使って商品開発をしたいと。それで、2つアドバイスさせていただいてできたものが、今、名古屋市のJICAにあるフェアトレード・ショップで売られています。この間、JICAにあるそのお店に行ってきたら、めちゃくちゃ売れるといわれまして。このお菓子屋さんも、全国のフェアトレードに関心ある方から注目されていますよ。

田中:いろいろとご活動されているのを聞いていましたが、そこまでとは知らなかったです。


企業や事業者に、SDGsの
非営利コンサルティングを。

田中:垂井町ではこれだけのマップになっているくらいですから、フェアトレードが浸透しつつあるということですね。

神田:世代間のギャップが大きいですね。40代以下の方たちにはすごく浸透してきていますし、子どもたちの動きがやっぱりいいので

田中:早くフェアトレードタウンになれるといいですね。

神田:垂井町の若手職員さんも燃えていて、シビックプライド、そして、SDGsを絡めてやりたいと、見事なプレゼン資料を作って、あちこちでプレゼンしてもらっています

田中:フェアトレードタウンへの活動が波及効果となっていますね。

神田:垂井町がSDGsへの取り組みを始めていて、昨年、第6次総合計画をSDGs分析しています。副町長からいわれたのが、SDGsは本当にありがたいと。SDGsは遠いところのことだと思っていたら、自分たちがやっている仕事もSDGsだということがわかり、こうやっていったらSDGsのゴールにもアプローチできるんだということを、職員たちが理解し始めたといわれていました。

田中:それは、ご一緒にやられたということですか?

神田:はい、原案を私たちのところでつくっています。

田中:そういうのが、やっぱり一番の理想形ですよね。

神田:今年は、垂井町の企業さんや事業者さんがどういう取り組みをされているのか、あるいはSDGsでどういう反応をされるのかをやってみようと思っています。

田中:それはいいですよね。

神田:商工会も社会福祉協議会も、どちらもSDGsに乗り気なんです。ただ、大企業にはまだアプローチができていないので。

田中:大手機械メーカーが近くにありますもんね。

神田:4、5年前に、その機械メーカーの新入社員研修の一部を受託したことがあります。うちには、ボランティアや環境活動を通して、企業活動と社会活動が密接に関係していることを体感できるカリキュラムがあるんですよ。

田中:すごく意識の高い企業ではありますので。

神田:今年は、企業さんと一緒にやりたいなと思います。なので、田中さんのいろいろなご経験やご蓄積も教えていただけるとありがたいなと思っています。


地域のことを自分ごと
として動ける地域社会に。

田中:こういうことで協働できることがあれば、ぜひともと思っています。これからどうしていきたいとか、泉京・垂井さんとしてのビジョンは持ってらっしゃるのでしょうか?

神田:住民一人ひとりが、地域のことを自分ごととして動けるような地域社会になっていけば、それが一番ハッピーだろうなと思っています。NPOはあくまで黒子ですから、そういうことをみなさんがやりやすい環境づくりをしていきたいですね。JICAさんなどと一緒にできるようになったので、こういう場で学んだことを世界各地でやってくれる方が育っていけば、まさにグローバルなつながりのなかで、金銭的な豊かさという意味ではなく、新しい意味での豊かさが実感できて、浸透していくのかなと

田中:いやでも、結局はそうやってつないでいくのがひとつだと思います。それこそまさにサステナビリティですからね。泉京・垂井さんは、神田さんと内木さんが主導されているんですか?

神田:うちは内木さんも含めて、全部でスタッフが6人いますが、運営自体は徹底して合議制です。年かさの者がこうだからと方針を出すわけではなく、若いスタッフがこれをやりたいっていったら、じゃあそれやろうかと

内木:神田さんは中心人物ではあるが、トップではないみたいな。

田中:ほかに、何か課題に感じていらっしゃることとかはありますか?

神田:より一層の地域社会への浸透ですよね。時々、ご近所の方がコーヒーを飲みに寄ってくれたりしますが、そういうことがもっともっと増えてほしいですね。不破高校がそこにあるので、小腹空いたからここでちょっとラーメン食わしてくれみたいな、そういう場になっていったらなと思っています。

内木:財務会計からは課題が山積みですが。

田中:NPOが継続していくのは、全国的にもそうですが、大変ですよね。

神田:今日をきっかけにいろいろと、またご連絡させていただきます。

内木:今度はプライベートで遊びにきてくださいよ。

神田:ちょっと疲れたからここで昼寝していくわとかね。

田中:久々にこの辺りにきましたが、本当にいいところですね。ありがとうございました。

TOPIC

  • 01 貧困をなくそう
  • 11 住み続けられるまちづくりを
  • 12 つくる責任 つかう責任
  • 17 パートナーシップで目標を達成しよう
※このターゲットはRe:touch編集部の視点によるものです
みんなにやさしい暮らしを提案している
「フェアトレード&地産地消 みずのわ」。
泉京・垂井では、オーガニックの食品や雑貨、垂井町や揖斐川流域の地場産品などを販売するアンテナショップ「フェアトレード&地産地消 みずのわ」を運営。古民家をそのまま活用した懐かしい雰囲気のお店で、フェアトレードや地産地消を取り入れた生活を提案している。
やさしい暮らしのマルシェ「みずのわ市」を定期的に開催しているほか、だれでも気軽に立ち寄れるコミュニティスペース「ぷかぷか」もあり、オーガニックの食品をここで食べたり飲んだりできる。また、展示会やワークショップなどのイベントスペースとしても利用することができる。
フェアトレード&地産地消 みずのわ
岐阜県不破郡垂井町宮代1794番地の1
tel0584・23・3010

Company PROFILE

企業名(団体名) 特別非営利法人泉京・垂井
代表者名 代表理事  浅野 宏
副代表理事 神田 浩史
所在地 〒503-2124
岐阜県不破郡垂井町宮代1794番地の1

Re:touch Point!

神田さんのNGOやNPOへの見識は、岐阜県のローカルSDGsに欠かせない。

Re:touch
エグゼクティブプロデューサー
田中 信康
泉京・垂井の神田さんは、海外でのODAや国際協力のご経験が長く、国内外のNGOやNPOのご見識は日本でも有数。岐阜県の垂井町に移り住んでこられてからは、垂井町をフェアトレードタウンにするため、フェアトレードや地産地消のアンテナショップから穏やかで豊かな暮らしをご提案されている。2011年から開催されているフェアトレードデイ垂井は全国から注目を集める一大イベントになっているほか、まりづくりの範囲を垂井町から揖斐川流域にまで広げられ、「穏豊社会」という持続可能な流域内循環型社会をめざされている。
16年目を迎えられた泉京・垂井さんでは、ミレニアム開発目標から社会課題に取り組まれており、今年、企業や事業者へのSDGsの非営利コンサルティングを始められたとのことだが、これは垂井町や揖斐川流域にもSDGsがようやく浸透してきたとのご判断だと思う。企業がSDGs経営を進めるには、NGOやNPOとの協働は欠かせない。そういった意味では、神田さんの知見が岐阜県のローカルSDGsに果たす役割は非常に大きい。今後、ぜひとも、お力添えをいただきたい。