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Interview
SDGsの先駆者に訊く

Re:toucher 09
「みんなを笑顔に。」
それはSDGsそのもの。

和光会グループ(岐阜県岐阜市)

秘書広報課 課長 安藤 恵子
インタビュアー Re:touchエグゼクティブプロデューサー 田中 信康
SDGsターゲット
  • 03 すべての人に健康と福祉を
  • 04 質の高い教育をみんなに
  • 05 ジェンダー平等を実現しよう
  • 07 エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
  • 08 働きがいも経済成長も
  • 11 住み続けられるまちづくりを
  • 12 つくる責任 つかう責任
  • 13 気候変動に具体的な対策を
  • 17 パートナーシップで目標を達成しよう
※このターゲットはRe:touch編集部の視点によるものです
岐阜市を中心に、医療や福祉、子育てに関する施設を運営する和光会グループ。幅広く“人”に関わる事業を展開する同グループは、その理念に「みんなを笑顔に。」という思いを掲げている。その思いは、まさにSDGsの考え方に通ずるのではないか。そう考えた同グループは、創業95周年を迎えた2020年からグループ内に、医師や看護師、保育士などさまざまな職種のスタッフが参加したSDGsプロジェクトチームを発足。スタッフ自身もSDGsに対する研鑽を重ねながら、さまざまな取り組みを展開している。チーム事務局を務める秘書広報課長の安藤恵子氏に、取り組みを始めた背景やそこから得た気づきをお聞きした。
※感染症対策を徹底した上で、少人数にて取材を実施しました

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SDGsに取り組む背景に、
創業から続く地域貢献への思いがある。

田中:和光会グループは、医療から介護、子育てまで幅広い事業を展開され、事業所も岐阜市内を中心に80カ所以上に上ります。現在の事業に至るまでの経緯を教えていただけますか。

安藤:当グループは、現在岐阜市東金宝町で運営する山田メディカルクリニックがある場所に、山田内科小児科医院というクリニックを開業した時からスタートしました。1925年の創業ですので、今年で96年目を迎え、現理事長が4代目となります。現在当グループは、在宅医療や訪問看護、訪問介護と患者さんのいらっしゃる地域を医師や看護師が訪れるスタイルを大切にしていますが、開業当初も医師が広範囲に渡り往診へ行っていたそうで、その頃から患者さんの元へ出かけていき、実際の声を聞いて事業を広げるという土壌が受け継がれてきたのではないかと思います。障がいを持つ方に向けた事業や子育て施設なども、そうした地域の声を聞いて生まれた事業です。

田中:創業当時から地域とつながる医療を手がけられていたのは驚きです。1925年創業というと、2025年には100周年を迎えられます。100年企業に向けてどんなビジョンを描いてみえますか。

安藤:私共は基本方針に「地域課題を解決する」という点を挙げています。元々、公共性の高い事業ですが、あらためて地域課題・社会課題を解決しようという自覚を職員全体で共有していくべきだと考えています。そのためにも、医療・介護・障がい者支援・子育て支援という4つの柱をつなぎ、多職種連携を強化しながら、本当の意味での地域包括ケアシステムを充実させること。それを当グループの強みとして、さらにエリアや規模を拡大させていくことで、地域の方に還元していきたいですね。

田中:地域貢献、その思いがSDGsの取り組みにつながったんですね。具体的にSDGsに取り組み始めたきっかけは何だったんでしょうか。

安藤:1年半くらい前から、この地域でも多くの人がSDGsバッジを着けるようになったと思います。それを見たうちの理事長が、しばしばSDGsのことを法人内で口にするようになりました。当グループは以前から「良いことはいち早く取り入れよう」という風土がありまして、その1つとしてSDGsにも着手すべきだと。

田中:最初は理事長からの発信だったんですね。やはりこうした取り組みは、トップダウンで現場を後押しすることは大切だと思いますが、その後、プロジェクト発足までどのように組織を取り組みへ促していったんでしょうか。

安藤:当グループには、約1,600人の職員がいますが、当初は私も含めてSDGsを知る人はほとんどいませんでした。やるからには、まず勉強が必要だと感じ、一昨年の秋くらいからSDGsに関する研修会に参加し始めたんです。研修を通じてさまざまな企業の取り組みを知った上で、学んできたSDGsに取り組む意義やメリットを私が幹部会議で話させていただいて、じゃあ、ぜひやろうと決まりました。

田中:それからプロジェクトチームが発足したわけですか。そして具体的な取り組みとして、冊子をつくられた。

安藤:うちのように多岐にわたる事業を手がけている法人が、SDGsにどう取り組むか。そこがすごく悩みどころでしたが、まずはSDGsを啓発する冊子を作成し、職員にも地域の方にも広く知ってもらうことから始めようと思いました。

SDGsが人をつなぐ。取り組みを通じてそれを実感。

和光会のSDGsプロジェクトチームは、オリジナル冊子「SDGsの基礎がよく分かる和光会オリジナルブックレット」を作成。これまでに3,000冊を印刷し、職員や地域住民に配布するほか、オンラインでも販売している。

田中:オリジナルブックレットは、非常に分かりやすくSDGsについてまとめられていますが、私も印刷業を生業としていますので、ここまでのものを創り上げるには、同時に大変な労力を要したろうと推察します。編纂作業はどのように進められたのですか。

安藤:プロジェクトチームを結成後、SDGsの7つの目標ごとに分科会を設けて、95年間で私たちが行ってきた事業や活動を整理する作業から始めました。そこから、これから私たちができること、取り組んでいきたいことを何度も話し合っていったんです

田中:チームメンバーは25名とお聞きしています。その規模で行われたことも素晴らしい点の1つだと思いますが、どんな方が参加されたんですか。

安藤:この取り組みをやろうと決まった時から、できるだけ多くの人に関わってほしいという思いがありました。当グループは、医師や看護師、保育士や通訳まで、幅広い職種が一堂に集まれる点が特徴。それを使わない手はないと、さまざまな事業部から人選してもらい、25名が参加しました。分科会の中には、自主的に仮のパンフレットを作るグループや、働きがいについて職員からアンケートを取るグループも出るなど、前向きな職員が多くてうれしい驚きでしたね。

田中:コミットメントの「地域とともに。Smile 和光会 2030」というタイトルも、皆さんで決めたと聞き、自分たちがありたい姿というのが伝わってきました。この取り組みで得たものは大きいですね。

安藤:はい。この取り組みで多様な人材の意見を生かした経験から、新たにさまざまな部署や事業所の方がどんな広報をしたらいいか案を出し合う「広報戦略会議」というものも立ち上げました。まさに全員参加型の会議で、参加者からも「こんな楽しい会議は初めてだ」という声もあり、ここから何か新しいことが生まれるんじゃないかと感じています。

田中:法人内にもいい刺激が生まれたようですが、冊子は地域の人に配布するほか、ネット販売も行っています。周りからの反響はいかがでしたか。

安藤:実は、冊子が完成して新聞に紹介してもらった時、翌日、一般の方から「いいことだから、自分も勉強したい。この本を買いたい」と問合せがあったんです。その方は福井と岐阜の県境に住んでおられて、私もビックリしたんですが、往復3時間以上かけて軽トラックで奥様と一緒にここへいらっしゃいました。本を購入していただいた時に、私が着けていたSDGsバッジに気づいて「どこで売ってますか」と聞かれたので、思わず私は自分の着けていたものを差し上げたんですよ。それをとても喜んでくださって。「あぁ、この本を作ってよかったな」と思いましたね。

田中:とてもいい話ですね。やはり誰でも読めるブックレットというのがいい。私からすると、この冊子をつくるのは相当険しい道なので、なかなか選択できませんが(笑)。

安藤:いや、本当に大変でした(笑)。でも、その後も全国の医療や介護分野の法人や大学の先生からも「ネットで本を見ました」とか「うちも始めたいけど、どうやって取り組んだんですか?」という連絡があって。私たちは職員やこの地域の人たちに向けてと思っていたので、これをそんなに遠くの方も見てくれるんだとは予想だにしていませんでしたが、この点でもやってよかったと心から思います。

田中:それがまさにSDGsの醍醐味とも言えますね。私もSDGsを始めてから、今まで会ったことのない人と出会うようになりました。安藤さんともSDGsでつながったご縁ですからね。

職員1人1人がSDGsを“自分ごと化”できるように。

田中:オリジナルブックレットの作成という1つの大きな取り組みを実現されたわけですが、現在、さらに普及・啓蒙につながる取り組みをされているとか。

安藤:2020年の12月に、子供向けイベント「SDGsこどもミーティング」を開催しました。新型コロナウイルスの影響でオンラインでの開催になったのですが、定員の30名が埋まり、オンラインになったおかげで関東からもご参加いただくことができました。

田中:参加者の反応はいかがでしたか。

安藤:SDGsを学習に取り入れている長良西小学校さんの取り組みを6年生のお二人から発表してもらったことで、「自分と同じ年代の子がこんなことをしてるんだ!と刺激になった」という声があったり、「SDGsをあまり知らずに参加したけど、クイズなどの参加型企画があったのでとても楽しく学ぶことができた」と言ってくれたり。アンケートを見ても、「今度は違うテーマで勉強してみたい」と次を期待されている声が多かったです。

田中:グループ内のスタッフも参加されたんですよね。

安藤:実行委員としてスタッフが関わり、工作の時間には、保育や子育て支援に関わっているスタッフが、講師を務めました。そのスタッフは岐阜県の木育コーディネーターとして活動している方です。今後もたとえばお医者さんの仕事を通してSDGsを考えよう!とか、当グループだからできることを企画して、うちの事業を知ってもらいながら地域にSDGsを広めていけたらとも考えています。

田中:SDGsって難しい、関係ないという見方がまだ世の中にある中、私はもっと敷居を下げなければいけないと思っていて、このRe:touchを立ち上げた背景にも、そんな思いがあります。だから教育とか学校の分野でも、こうした活動を広めていただけたらと思いますね。さらに今後は、どんな取り組みを模索されているんでしょうか。

安藤:2030年には大人になって社会で活躍する今の子ども達に向けたイベントも、ぜひ継続していきたいですね。昨年3月に新築移転した寺田ガーデンは、スキット工法というSDGsに配慮した建築を施しています。今後もクリーンエネルギーの使用など環境や人に優しいことはどんどん取り入れていくべきですし、例えばフェアトレード製品の導入やLGBTに配慮した取り組みなど、SDGsを視野に入れた施設運営を検討していければと考えています。

田中:それはインナーブランディングにもつながりますね。

安藤:グループ内でもまだまだ啓発活動は十分ではないので、今回作った冊子を使って、月1回は職員研修も行っています。また職員全員に配布している広報誌『niccori』にもSDGsコーナーを設け、今度、田中さんにもご登場いただきますが、SDGsの活動をしていらっしゃる方との対談やインタビューを掲載しています。

田中:僭越ながらお力になれればと思います。

安藤:ブックレットにも「SDGsを自分ごと化する」って書いてあるんですが、職員が自分ごととして取り組んだり、自分はどうなんだろう?と考えるきっかけになればと思います。(了)

子供向けイベント「SDGsこどもミーティング」
広報誌「niccori」(季刊発行)

TOPIC

  • 03 すべての人に健康と福祉を
  • 04 質の高い教育をみんなに
  • 08 働きがいも経済成長も
  • 11 住み続けられるまちづくりを
  • 17 パートナーシップで目標を達成しよう
※このターゲットはRe:touch編集部の視点によるものです
SDGsの基本がよく分かる
オリジナルブックレットで自分ごと化
SDGsとは何かという基本知識や、個人でも始められる取り組みを掲載するほか、和光会グループにおけるSDGsの取り組みを紹介。これまで職員や地域住民に配布したほか、2020年5月からは和光会グループ公式ホームページやオンライン書店にて、一般にも販売を開始し、SDGsビギナーからSDGsに取り組みたい企業まで、多くの購入者に好評を博している。

全70ページ A5版 オールカラー
定価 1,200円(税別)

Company PROFILE

企業名(団体名) 和光会グループ
代表者名 理事長 山田 豪
所在地 〒501-0104 岐阜県岐阜市寺田7-100

Re:touch Point!

SDGsを共通言語に職員の意識を、グループ力向上につなげる!真摯な取り組み姿勢と人材のミックスアップがここにある。

Re:touch
エグゼクティブプロデューサー
田中 信康
大組織になるほど各部門連携に関わる課題があがる中、和光会グループでは多職種が集まった1つの取り組みをカタチにし、参加者が自社のビジョンを再認識することで、皆さまの誇りにつながっていく成功プロセスを実現させている。
職員1人1人への啓発活動がインナーブランディングを高め、和光会グループそのもののチカラへと直結していくひたむきさを感じた。
社内外に向けたSDGsの啓発・啓蒙に対して安藤さんのアクティブな姿勢は、その取り組みに参画される職員皆さんの意識と共にますますグレードアップしていくであろう。
SDGsの取り組みによってグループの職員同士だけでなく、グループサプライチェーンを巻き込んだ動きに拡げ、事業とサステナビリティをシンクロさせていく理想の形をより追求されることが期待される。
ビジネスモデルそのものがSDGsとの親和性が高いことで、より未来に期待ができる事業モデルを地域と共に大切にされるマインドこそが、和光会グループのSDGsの魂であろう。